ふたりだけの海

□始まり…
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終業のベルが鳴り、学生生活最後の講義が終わった。
ドラは来月に学校を卒業する。


ここ天界では卒業したものには人間界に置かれた家が送られ、そこに共同で住む事が何年か義務付けられる。そして成績優秀者には特別よい家が与えられるのだ。

ドラは学年上位の成績で卒業したため、特別に大きな屋敷で一人で住める事になった。

一人で住むのは少し寂しい気がするが、ドラにとってはその方がよかった。

ドラは何よりも一人の時間を好んでいたから。



天界の学校へ通う子ども達は天子と呼ばれており、卒業してからは天界に残る者、人間界に行く者、人それぞれ進路は分かれる。

天子達の中には人間界へ行くことを心待ちにしている者もいる。

天子である内は無断で人間界に行く事は固く禁じられているが、学校を卒業すると人間界で人間として生活できるからだ。

人間界で人間として暮らしながら、時折人間の事を調べ天界へと報告する。それを元に天界の神達は人間界を改善し見守っているのだ。




ドラはもう既に人間界にある家も見物済みで、今の家にある荷物も全て移し終わっている。あとは卒業式を終えて人間界に行くだけだ。

しかしその肝心の屋敷は大きすぎた。
二階建てで広い部屋が12個もあったのだが、ドラが家から持ってきた本棚や食器棚などの荷物を置くと一部屋で足りてしまう程だ。

きっと人間界で宿などに使われていた屋敷を天界の者が安く買ったのだろう。

学校の仲間には羨ましがる者もいるが、ドラが今まで住んでいた家がそれほど大きくなかったため広い家は住みやすいに越した事は無いが、いくらなんでも大きすぎる屋敷にドラは溜め息が出た。


「この広い家の掃除一人でやるのかよ…」



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