ふたりだけの海

□出会い
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ドラが家の門の前まで来た時だった。

ドラは門の前にある…転がっていると行った方が相応しい薄汚れた黒い布の塊の前で足を止めた。




(誰かが捨てていったのかなぁ…)

あまりこの辺まで人来なさそうだけど…
そう思い、無視して家に入ろうと門に手を掛けたその時だった…





「…っ…う…」

「…!?」


突然した呻き声にドラはドキッとしてもう一度その布の塊に振り返った。


(確かに声がした…布の中から…)


だがその布のはそれっきり何も言わないし、動きもしない。

暫く戸惑っていたドラだが、思い切って布に手を掛け中を確かめる事にした。



「っ……」


バサッ



「っ…こ…れ…」


人だ…



布の中には人がくるまれていたのだ。

顔は泥が付き所々汚れていたのでしっかりと確認する事は出来なかった。



(ま…まさか…誘拐…?)

「っ…どこかに…」

「えっ…!?」

再び突然布の中からした声にドラは驚きの声を上げた。聞こえたのは女の子の声だ。


「わたしを…かくして…」

「え…」

「おねがい…」


ドラは動けずにいた。そしてそれっきり布の中の声はしなくなってしまった。


まだ人間界に来たばかりなのに誰かも分からない人間を家に入れるなんて…

少ししり込みしたが、このまま見放す訳にはいかないと思い、ドラはその人を屋敷の中に連れて行こうとした。

布を剥がしその人を運ぼうとしたのだが…



「ぁ…」


そのくるまれていた少女は裸だった。

ドラは見なかった事にしてその少女を布にくるんだまま家の中に運んだ。





ドラはたくさん空いている部屋の一つのベッドに少女を寝かせた。

そしてあまり体を見ないようにして軽く体を拭いた後、一枚シャツを着させ少女に薄い布団を一枚掛けた。

泥が落ちきらないが風呂に入れる事は出来なかった。

いろいろな意味で…


先程は意識が辛うじてあった様だが、また意識を失ってしまった様だ。



「早く起きてくれるといいんだけどな…」



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