ふたりだけの海 〜マイナス〜
□君が愛しいから嫌なんだ…
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「いいお天気ですわね」
「そうだね」
明るい太陽の光が優しく降り注ぐ中、ふたりは他愛のない話を楽しくしながらゆっくりと歩いて行く。
「ねぇ…王子…」
先程まで楽しそうに王子と話をしていた姫だが、少し押さえ気味な声で王子を呼んだ。
「なんだい?」
「王子は…無理してはいませんか…?」
「何を…?」
「…下界に行く事です…」
「……」
王子は姫のその言葉を聞くと暫く黙ってしまった。
そしてその暫く沈黙の後、ようやく口を開いた。
「…まぁ…少しはな…」
「でも…行ってもよいのですか…?」
「…やだよ」
王子は僅かな微笑みを悪戯っぽく浮かべながら答えた。
姫はその表情が何を意味しているのか読めなくて、少し戸惑った。
「では…」
「でもいいよ」
下界に行くのはやめましょうか、と言おうとした姫の言葉を王子は遮った。
「え…?」
「久しぶりだからね。たまにはいいだろう」
「本当に…いいのですか…?」
「うん。姫も楽しみにしてるみたいだから」
「ありがとう…王子…でも無理しないでくださいね」
「べつに無理なんてしてないよ」
王子はそう言って笑っていたが、姫には王子が本当は下界にいく事が嫌なのが分かっていた。
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