ふたりだけの海

□出会い
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ドラが人間界に来てから2日目。その日は早速人間界に来て初めての仕事。

仕事といっても今回はただの街見学なので、学校にいた頃のレポートと変わらなかった。

朝早く、肩に乗るほどの小さい竜がその手紙を届けに来た。

この竜は人間には見えない特殊な竜で、体の色も一匹一匹違っている。

ドラに手紙を届けに来たのは真っ白で綺麗な毛並みの竜だった。

手紙を渡すと竜はすぐに飛んで行ってしまった。



手紙には『人間界を見学し、思った事、感じた事をレポート用紙10枚以上に書け。期限は一週間。』

とだけ書いてあった。







ドラは街に向かって歩き始めた。ドラが天界から貰った家は街から少し離れた林の中に建っていた。

ここは静かだしドラにとってはありがたかった。

それに家までの一本道が通っていた学校の並木道によく似ていた。

あの子と出会ったあの道に…



しばらく行くと林の木達は無くなり、住宅街へと続いていた。
人間達が住む所だから騒がしいだろうと思っていたが、ここは人もほとんど見掛けずとても静かだった。

また暫く歩いて行くと商店街に出た。ここはさすがに人がたくさんいて賑やかだった。






住宅街と商店街をしばらく巡り、ドラは数本の木とベンチしかない公園と呼んでいいのかも疑わしい殺風景な公園のベンチに座っていた。


(ここって本当に公園なのか…?
ぁ…でも公園の前に看板が立っていたなぁ…『ベンチ公園』って… 変な名前…)



いらぬ事を考えてしまったが、ドラはレポートのことを真剣に考えた。

遠くに見えた高い高層ビルにはさすがに驚いたが、天界と人間界がよく似ていたため特に興味を引く物も無かった。

違う所といえば天界には種族がいくつかあり、外見が少しづつ違っている所と、住んでいる場所だろうか。



天界には天使族、獣族、水族、鳥族、悪魔族の5つの種族が住んでいる。

天使族と悪魔族は人間と容姿が同じだが、翼を出す事が出来、空を飛ぶ事が出来る。

暮らしている環境が人間界に最も近いのも天使族だろう。そして天使族が人口の中でも一番多く天界を仕切っているのも天使族だ。

逆に悪魔族が一番少ない。悪魔族は人気の少ない場所でひっそりと暮らしている者が多く、墓場で暮らしている者もいると言われ、天界では忌み嫌われている存在だ。

鳥族も天使族同様翼で空を飛ぶ事が出来るが、耳の部分が鳥の羽の様になっているのが特徴だ。
高い場所を好み、木の上に家を建てて暮らしているものが多い。

獣族も耳の部分が犬の耳の様になっている。
自然溢れる森で暮らしている。

水族も一見人間と変わらない容姿をしているが、耳が魚のヒレになっており、水に濡れると下半身が魚の尾になり水中でも自由に泳ぐ事が出来るのだ。天界の中でも一番美形が多いのが水族といわれている。
水の中に家を作る者もいるがそれは古い世代が多く、水の中では他の種族が立ち入れられない為若い水族は陸に住んでいる者が多い。

そして耳が人間と違う者は天使達により下界に降りる際にだけ普通の人間の耳になる呪術がかけられる。



(そうか、人間界だけの事じゃなくて天界との違いを比べて書くのもいいかもしれないな…)


レポート10枚も何を書こうか悩んでいたドラだったが、だんだんと書く内容が決まってきた様だ。

そして今日はもう帰ってしまおうと思い家に向かって歩き始める。

もう夕方になっており赤い夕焼けが家路へと向かうドラを照らした。



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