ふたりだけの海 〜マイナス〜
□弱った心に
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「ねぇ王子、このお洋服どうかしら?」
姫はソファーで本を読んでいた王子に声を掛けた。
「あれ…その服作ったの?」
姫はよく着ているロングスカートの服の縁に、薄い水色がふんわりとグラデーションに入っている服を着ていた。
スカートの裾をひらりと持って王子に見せている。
「えぇ、素敵でしょ?」
「そうだね。水色がとても綺麗だよ。よく似合ってる」
「ありがとう」
姫は少し恥ずかしそうに微笑みながら言った。
確かに姫は綺麗だった…
綺麗だったけど…
私は何かに気付いてしまった…
「…ねぇ…もしかしてその服…下界に行く為の服…?」
「えぇ、そうですよ」
「そう…」
「……」
その時窓からふたりの間を生暖かい風が強く吹いた。
「王子…?」
「…なんで…?」
「え…なんでって…せっかくのお出掛けですから…おしゃれしようと…」
「それで?」
「…王子は…何を言いたいのですか?」
「何って何を?」
「それは私が聞いているのです!」
「……」
「…本当に……本当に残念ですわ…王子はまだその様に思っているのですね…」
「……」
「…信じてくれていないのですね…」
「違う…」
「何が違うというのですか!?もうよく分かりません…!」
「姫…!」
姫は家を飛び出して行った。
その瞳には押さえられなくなった涙が零れ落ちていた。
残された王子は姫を追う事なく、その場に立ち尽くす事しか出来なかった。
「…俺は…何をしているのだろう…」
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