ふたりだけの海
□始まり…
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満月の輝く夜、木々の生い茂る並木道をドラは大急ぎで走っていた。
(やばいなぁ…明日からもう仕事始まるし今日中に荷物の整理終わらせたいんだった!)
学校生活最後の日、人間界の事についてもっと深く調べようと学校の図書館に寄っていたら、いつもより帰る時間が遅くなってしまったのだ。
その時だった…
「ん…?」
一瞬…白い光が道の横の木々の隙間から漏れていたのをドラは見た。
「なんだ…?」
急いでいたのだが、何故か不思議とその光のある方に行ってみたくなった。ドラは引き寄せられるようにその光の方へ歩み出した。
そこには小さな泉があり、水は澄みきっていて驚くほど透明で美しかった。
そして夜の月が静かな水面に写ってキラキラと輝いている。
「こんな所あったんだ…」
その湖の脇には一本の木が植えられていて泉の少し上に太い枝が伸びていた。
光はそこからきている様だった。
あ…
人がいる…?
その枝の上に一人の少女がすやすやと眠っていた。
ドラは美しい泉とその少女に見とれた。
少女は泉に反射する美しい月の光を浴びとても綺麗だった…
少女が寝返り、少しだけ体を動かすと、少女の手の中にあったりんごが落ちパシャッと小さな水飛沫をあげた。
その音に少女は静かに目を覚ました。
ゆっくりと体を起こし手の甲で眠たそうに目を擦ると、手の中にりんごが無いのに気付き辺りをキョロキョロと見回していた。
そして泉に落ちたりんごを見つけ、少女は手を伸ばしてりんごを取ろうとして限界まで手を伸ばした時だった。
「…!」
バシャン!
少女は湖に落ちてしまった。
湖の深さは水が湖の底まで見えるほど透明だったため確認できた。
少女は水の中で苦しそうにもがき、すぐに湖の中に沈んでしまった。
「っ…!」
ドラは持っていた荷物を投げ出し急いで湖に飛び込み少女を助けようとした。
だがしかし少女の姿は見えない。もう底に沈んでしまったのだろうか。
助けなきゃ…
どこに…
泉の中でドラは夢を見た。
誰かを待ってる。
それが誰だかわからない。
でも…早く来てほしい…
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