正直のところ,スノウは『小人』の話など面白くもなんともなかった。
しかし,レカンの話を聞いてあることを思いついてしまった。
「ねえ,レカン。その7人の『小人』がいるのは北の森のどのあたりなの?」
「確か,森の奥にある湖を越えた先にある丘の下に家があると聞きました」
「湖を越えた…丘の下に……ね」
意味深にそう呟いたスノウにレカンは嫌な汗が背中をつたった気がした。
長年つかえてきた感が,警報をならしている。
「…スノウ様,何を考えていらっしゃるのですか?」
「大したことではないのよ。ただ,ここは住みづらくなってきたし…家出もいいかもしれないわ」
どこへ?
と聞く必要などなく,レカンは答えが分かってしまった。
否,話の流れで誰でも分かってしまうだろう。
それでも,ミジンコ以下の希望を持ってレカンはスノウに問いかけた。
「…どこへ?」
「小人さんのもとへ」
そう言い切ったスノウの表情は,とても晴れやかな笑顔だった。
顔だけなら,男女問わず魅了されてしまいそうな美しさがある。
発言に問題がありすぎるが。
「やめましょう。今すぐ考え直しましょう。いえ,先程の話は全て忘れましょう。
一応,仮にも,肩書きだけでも,姫ではありませんか」
「どうやらレカンは私にケンカを売りたいみたいね。それとも首にされたいのかしら」
「わ,ああ!?すみません,すみません口が滑りました」
「つまり,事実なのね」
姫付きの侍女にしては,レカンはずいぶんうっかりな性格みたいである。
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