ルーナティックがスノウを殺そうとしたり,嫌がらせをする根本的な理由はスノウの美しさにある。


スノウが成長する前までは,ルーナティックが国一番の美女と持て囃されていた。


彼女自身も自らの美しさに自信をもっており,自分を磨くことに全てをかけていたと言っても過言ではない。


しかし,スノウが成長するにしたがって,皆の目はルーナティックからスノウへと目移りしていった。


周りの人間がスノウの美しさを褒め称えるたびに,ルーナティックは苛立ちと腹立たしさに苛まれた。


それでも相手は実の娘でもあり,まだ幼い。


皆,お世辞を口にしているだけかもしれないと思い立った。



そこでルーナティックは,ミラーを呼び出し問いかけた。


ミラーはルーナティックの幼なじみでもあり,優秀な魔法使いでもある。


また,ルーナティックに対し嘘を決してつくことがないからだ。



「ミラー,この国で一番美しい女性は誰?」


「……スノウ姫でございます」



その言葉を聞いた瞬間,ルーナティックは頭が真っ白になった。



(今,ミラーは何と言ったの?……わたくしより,あんな小娘が美しいですって)



思わず,目の前にいるミラーを衛兵に殺させてしまいたいと思った。


だが,かろうじて残っていた理性がその命を口にだすのを止めた。


ミラーほどの魔法使いはこの国には存在しないからだ。



(許しはしない。わたくしより美しい存在なんて,いなくていい)



ふと,ルーナティックは気づいた。


スノウがいなくなれば今まで通り,自分が一番美しい女性ではないかと。


しかし,スノウはこの国の姫であり仮にも実の娘。


ルーナティックが直接的になり,間接的になりスノウの生死に関わるのはよくない。


ならば,この城に居たくなくなるようにすればいい。

城から追い出されれば,箱入り娘のスノウが外で生きてゆけるわけがない。








その日からルーナティックは,スノウを追い出すための策をいくつも投じた。


しかし,10年経った今でもスノウは城にいる。


そう,この策には一つだけ誤算があった。


歪んだ考えと行動力をもつルーナティックの血を,スノウもまた引いているということを。




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