「実はカース様は,遺体愛好家という少々変わった趣味をお持ちでして」



少々変わったで,済ませていい趣味ではないだろう。


全力でスノウは思った。


スノウだけでなく,同席しているアパシーとインケイパブルも同じ思いである。

そんな3人に気づいているのか気にしていないのか,ビルスは涙ながらに語る。



「王子であらせられるカース様が遺体愛好家などと,民に知られるわけにもいかず内密に収集していたのですが…」



収集してたのか。


再び3人の思いが一致する。



「しかしカース様の父君であらせられる国王陛下にある日収集を禁じられ,悲嘆に暮れる日々が続きました……」



ビルスの昔話が長くなってくると,スノウは聞くのが面倒になってきていた。


すると,アパシーが小さな声で囁いてきた。



「なあ,要約するとこいつらは隣国の王子とその従者で,王子は遺体愛好家だった。

で遺体を手に入れるのを親父に中止されたから,見つからないよう他国で探していたらお前の悪戯に引っ掛かった。

ってことか?」


「悪戯って言わないで下さいます」


「それ以外のなんでもねえだろ,スノウ姫」



そう返されると何も言えなくなる。


変態な王子とネジのゆるい従者のせいで,スノウの正体はばれてしまった。


そのため,今までの事情を全て話すことになった。


一つだけ良かったと言えることは彼らが事情を知った後,スノウをこれからもここに置いてくれると言ったことだ。


てっきり姫だとか,実母との憎悪関係を聞けば追い出されると思っていたのに。



「突っかかるなアパシー。何にせよ,スノウが生きてるなら二人には国に帰る道しか残ってないだろ」


「おっさん,いいとこ気づく」


「おっさん言うな」


「アパシーさんも結構年齢は上ですよね…インケイパブルさんておいくつ?」



スノウが問うと何故か二人とも黙ってしまった。


どうやら触れてはならないことだったらしい。



「それはおいといて………ゴホン,ええとビルスさん?」


「夜の内に国境を無断でこえ………はい,なんでしょうかインケイパブル殿」



夢中で話していたビルスは,3人がこそこそ話していたのを気づいてなかったらしい。



「見ての通りスノウ……スノウ姫は生きてる。ならもう用はないだろう」


「それもそうですね」



すると,ずっと黙ってソファーに座ったままだったカースが名案を思いついたと口を開く。



「そうだ,いっそスノウ姫に本当にあの世に行ってもらうというのはどうだろう」



その瞬間,クルアルティーに鼻血と脳震盪をおこさせたスノウの拳がうなった。




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