スノウがこの屋敷に住むようになり,5日。
例の自分でもぶっ飛んだ発言だと自覚している発言が大問題となり,言い合いになったが。
帰る家がないという話をすると,屋敷には置いてくれることとなり。
とりあえず家政婦として雇うという形におさまった。
「…私も別に言いたくて,夫を探しに来たなんてふざけたことを口にしたわけではありませんのに。
あれは,レカンからのアドバイスによるものですのよ」
「ぶつぶつ煩い」
「…と,言えたらどんなに楽なのでしょう」
クルアルティーに注意されスノウは口を閉じる。
初日のことがあってから,あまりクルアルティーに強く出れないのだ。
今,スノウは夕飯の準備を手伝っている。
一応,家政婦として雇われのだが。
掃除・洗濯・裁縫は完璧。
家事は壊滅的というスノウの妙な腕前により,家事はこれまで通り7人で交代制となった。
多少の手伝いならスノウにも出来るので,毎日厨房に来ている。
食器をだしたり,野菜を洗ったり手で千切る位のことだが。
今日の当番はクルアルティーとなっていたが,暇だという理由でインケイパブルが。
いつの間にかいたレティサンスが今日は料理を手伝っている。
「ねえインケイパブルさん?」
「何だ,包丁は駄目だぞ。血だらけの野菜なんて食べたくないからな」
事実なのだが,年頃の女の子としては若干傷つく。
「違いますわ。レティサンスさんは,口が聞けなかったりしますの?」
「いや,喋るぞ。運が良ければ半月に一言は聞ける」
「俺は二年は聞いてないが」
「クルアルティーはな。あとインサルトとアパシーもそれ位聞いてないだろ。お前らは気が短いし」
「半月に一言は,気が短いとか長いの問題か」
二人の会話に暫し呆然。
スノウとしては喋れるのに,声を出さないというのに驚きだ。
それに一緒に暮らしていて二年も声を聞かないというのもどうなのだろう。
そっとレティサンスに視線をやると,彼は黙々と鍋をかき混ぜていた。
「…………」
勿論,無言で。
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