Novel-2
□皐月の微笑み
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若葉の生い茂る穏やかな皐月の日。
俺は緑の豊かな学園――ではなく、学園から出ている直通バスで市街地まで来ていた。
「悠ちゃん?どしたの、ぼーとして。体調悪いん?」
隣にいる男――静が心配そうに顔を覗き込んでくる。
何処の訛りともつかないその口調が心地よい。
「ん、大丈夫。日差しが気持ちくてぼんやりしてただけだから」
「そうなん?もうすぐ映画館に着くからそしたら座ろか」
別に具合が悪いわけじゃないけど、人混みに酔ったことを静は気付いてくれた。
――
「楽しかった!!蜘蛛男サイコーだよ♪」
「喜んでくれて嬉しいわ、やけど、何で悠希は『蜘蛛男』って言うん?」
隣でにこにこしてた静が不思議そうに聞いてくる。
特に理由なんてないんだけど…………
「著作権の問題?」
「なんでや、悠ちゃんってたまに変なこと言うから、おもろいなぁ」
そんなつもりはないんだけどな。
ただ気分的に静みたいな事言いたくなるだけで。
「静は何時も変な事言うよな」
「そう?」
そうだよ。静は周りの心配ばかりして明るくすることに必死で自分の事は後回しにする。
でも、俺が何かを言っても意味がないから、今はとりあえず……
「腹減った」
腹拵えが先だ。
静が時計を見て、納得した。
もう1:30だから、俺の腹が限界なのを察してくれたようだ。
「何食いたい?」
「ハンバーガー」
質の良い物は普段学園で食べてるから、500円くらいで食べれるファーストフードが食べたくなった。
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