□θ 例えばオレが…
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「獄寺くんはさ…」

突然だった。
十代目が昔の呼び方で静かに声をかけてきて(今は全員名前を呼び捨てだ)、驚いた顔をしてしまった俺を見て微笑んだ。

「獄寺くんは…オレが突然死んでしまったら、きっと泣いてくれると思うんだ。」
「…へ?」

一瞬何を言われてるのか分からなくて、間抜けな声がでるが、十代目にはどうでも良い事の様でやんわりと微笑んだまま言葉を紡ぐ。

「あぁでも、その前に自分の事、責めるかも。『自分がついて居ながら何てザマだ』とか、言いそう。」

クスクス笑って窓に視線を向けて、更に言葉を続ける。

「オレが死んじゃったら、オレと、オレの大切にしてる物、全部焼いてね。」
「十代目…」
「それで、残った灰は、君のその両手で空に還し「十代目!!」

俺の言葉を聞こうともしない事が嫌で、強く名前を呼べばやっと俺を見てくれた。

「なぁに?獄寺くん」

その表情は、酷く穏やかで。

「…それは、十代目としてのお言葉ですか?」
「…違うよ。」


「―――君の、恋人としての、沢田綱吉の言葉。」

微かに頬を紅くしてはにかむ姿が、十年前の十代目を彷彿とさせた。

「……すいません。貴方のお言葉に、俺は応える事は出来ません。」
「……やっぱり少し重いかな?」
「いいえ。そういう意味じゃないです。」
「?」
「…此処に居る、獄寺隼人は、貴方の後にも先にも死ぬつもりが無いからです。」

十代目の前に膝を付き、白く小さな手を握る。

「獄寺くん…」
「貴方の命は俺が必ず守り抜きます。それでも貴方が命を落とす様な事があるとすれば…それは、俺の命が尽きる時でもあります」

握った手の甲に、唇を寄せて確りと十代目の視線を捉え、決意を言葉に。

「…貴方の逝く先が、例え地獄であろうとも俺は貴方の側に…。」
「…なんだかプロポーズみたい///」
「プロポーズですから。」

俺の言葉に紅くなって優しく笑う貴方に、永遠の愛と、忠誠を――――――。



END。

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