□† 許しません
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君が好き。大好き。
僕のこの生の中で、君は珠玉の宝物。


『許しません』



「・・・」
「・・・」

参ったなーといった顔でツナは少し首を振った。
学校へと向かう道すがら、目の前に現れたのは帽子を被ったメガネだった。

「・・・おはようございます」

胡乱な目を向けながら、とりあえず挨拶をしてみる。
案の定、言葉は発さないまま、メガネを上げつつ会釈を返してきた。
その様子を見てツナがまた溜息をついた。
やはりコンタクトは難しいと。
なおも無言で立ち尽くしている千種に、会釈をしつつ脇を通り抜けようとした。
刹那。

「!?」
「・・・あ!」

掴まれた手に驚いたのはツナばかりではなかった。
掴んでしまった方の張本人・・・千種もまた少なからず驚いていた。

「・・・何か用ですか?」

先に我に帰ったツナが、敵意を丸出しにした視線で千種を睨み付ける。
無理も無い。
自分は彼の友人達に、とてもひどい事をしてしまったのだから。
でも・・・その目に心が痛む。
千種がゆっくりとツナの顔に目を向けた。

「・・いや」

それでも口から出たのはそんなそっけない言葉で、千種は自分で自分が嫌になってしまった。

「・・あの・・ボンゴレ」
「・・なんですか?」
「・・あ・・」

悪かったなどといえるわけが無い。
千種は口をきゅっと結ぶと、言葉を押し止める。
それは・・・自分の絶対存在への侮辱へとなるから。
そうだ。
言葉を紡いだところで、自らの罪は消えたりしない。
なればここで何かを言うのは、意味など無いのではないか?
そんな思いに支配されていく中、心に決意する。

「・・なんでも・・・ない・・・」

そうだ俺はもうあの人に着いて行くと決めた。
今更太陽を求めるなどおこがましいのだ。
おれは・・あの方と闇へと落ちてゆく。
それならばここで・・・未練は解き放とう。
千種はゆっくりとツナの目をみつめながら、精一杯の笑顔で呟いた。

「・・・元気で」
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