甘味屋さんと鈴
□第4話
1ページ/1ページ
だんごドロボウと仲良くなってから後日、鈴はこれまでに2、3日に1度だった甘味屋に毎日訪れるようになった。
彼とは妙な連れ合いだが、お互い忍者だということもあって話が弾み、退屈しないのだ。
それに、月代ゲンは学校の先生とは違う。
怒られる心配も無いし、気兼ねする必要も無いから、鈴はこの人物が気に入ったのかも知れない。
「………今日はやけにハイペースですね……」
言いながらゲンは隣に座り、彼女がおまけしてもらったという三色だんごを手に取った。
確かに今日はいつもよりだんごの皿が大きく、肝心なだんごが少ない。
甘いものになると大喰らいになる鈴のことだから、あまりめずらしいことでは無いのだけど。
「……今日は体術の練習だったんだよ」
いつになくぐったりとした様子で答える鈴。
きっと、先ほどの授業内容を思い出しているに違いない。
あぁ、なるほど。
思って彼は、納得しながらだんごを頬張った。
学校の体術の練習といったら半端ではなく、生徒の想像をはるかに上回るほどきついのだ。
幸い彼女は忍者の一族に生まれたため、それなりに基礎体力はついているものの、やはり限界を見てしまったのだろう。
気を取り直してだんごを頬張る鈴に、彼はなぐさめるように頭を撫でてやった。
(……しかしまぁ……なんていう甘党忍者なんでしょう……)
三色だんごにみたらしだんご、しかも最後の締めはおしるこだなんて、よっぽどの甘党でなければ食べたりしないだろう。
ゲンも男のなかではなかなかの甘党だが、彼女ほどでは無かった。
「……鈴さん……景気よく食べるのもいいですが……」
おしるこの最後の一口を食べ終えた彼女を見て、ゲンは呆れたようにため息をついた。
「…ほどほどにしないと太りますよ……」
「……わたしは忍術より武闘派だからいいの」
ごちそうさま、と手を合わせながら鈴はそう言った。
実際彼女はこの後、四季の里1周を予定している。
そのことを彼に伝えると、ゲンは少し驚いたように目を見開いた。
「…でしたら…私が…」
その武闘…教えてさしあげなくもないですよ。
きょとんとしている鈴に、彼はめずらしく頬を赤くしながらそう言った。
そいつはどーも。
(……ちゃんとお礼が言えないのですか…)(…あいにくそのような心は持ち合わせておりませぬ…)
続く