甘味屋さんと鈴

□第2話
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入学してから1週間。
まだまだ初々しい1年生達が教わった最初の忍術は、分身の術だった。




印を組んで手を合わせれば出来る…というわけではもちろん無く。




(…かったるい…)




そう思いながら授業中に居眠りを始める鈴は、やっぱり強者だ。




****




(…だんご…美味しい…)




授業中に居眠りをしていた鈴はこっぴどく叱られ、人より遅い放課後になってしまったのだが、彼女はまったく気にしていないようだった。




むぐむぐと必死に口を動かす鈴は、まるでドングリを食すリスのようで。




「お客さんかわいいから、1本おまけしちゃう!!」




「………どもっス、」




甘いものが何よりも大好きな彼女のかわいらしさに、得をすることもしばしば。
どうやらここの甘味屋は、鈴の行きつけのお店になりそうだ。




それに外で食べることも出来るし、季節も感じられる。




(………春、か……)




お茶を飲んでいる最中に、ふわりと風が吹いた。
どこからか桜の花びらが飛んできて、どことなく心地よい。




年齢の割に大人びている彼女は季節を楽しむことを知っている。
それに、この里は四季の里だから、もちろん春夏秋冬繰り返しているわけで。




「……1本いただきますよ」




「……っス……え?」




何気なく鈴の思考を遮り、さりげなく会話に入ってきた男の人は。




ものすごく体調の悪そうな人だった……………!!




(うわ…体調悪そう…)




彼女の隣でみたらしだんごを頬張っている彼をちらりと盗み見て、鈴はこっそりとそう思った。




背中に剣を背負っているあたり、彼も忍者なのだろう。
しかし、顔色はまったく良くはなく、目の下にはクマが出来ており、だんごの串を掴む手にはかすり傷がちらほら見える。




…夜通し戦っていたのだろうか。




「…貴女だけですよ、」




「…は、」




何が、と言おうとして、鈴は口をつぐんだ。
いかにも体調不良そうなその彼が、何故か可笑しそうに笑ったのだ。




「私を見ても体調悪そうと言って心配しない人です」




くすくす、くすくす。
一体何が可笑しいのだろう。




彼は絶えず笑い続けた。




(つーか初対面で体調悪そうとか言えるかよ…)




彼女がそんなことを思っているとはつゆ知らず。
体調不良のその彼は、食べ終えただんごの串を空いているお皿に戻し、ごちそうさまと小さな声でそう言った。




「では、私はこれで…」




さっと手を合わせた瞬間に、どこからか煙が吹き出して彼を包み込んだ。
一瞬何が起きたのか分からなくて、鈴は思わず目を瞑る。




「…………………。」




もう一度目を開けてみても、そこにはただ呆然としている彼女がいるだけだった。





だんごドロボウ。
(ちゃっかり2本も食べてった…)





続く

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