天使の書庫
□愛しい人
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なぁ、シン。お前をこんなに愛しく思い初めて一体どれくらいの時が過ぎたろうか。
夜風が心地よく入る窓際で、麒麟のユダは物思いに耽っていた。
翡翠の美しく艶めく髪も、顎ラインや鎖骨がが綺麗に見えるくらい華奢な体もすべてが愛しい。
「コン、コン……ユダいますか?」
「ん、あぁ。」
ドアが開きシンが部屋に入ってきた。
「こんな夜遅くにすみません。なぜだか、無性にあなたに会いたくて……。」
シンは顔を赤らめ、うつむきながら恥ずかしそうに言った。
「俺も丁度お前のことを考えていた。」
「私のことをですか?」
「あぁ、お前を愛しく思ってからどれくらいの時が過ぎたのだろうかとな。」
ユダは微笑みながら言った。
「もう、どのくらいになりますでしょうか…?」
「俺たちは人間と違って、老いというものがないからな、時の流れに疎い。」
ユダの言葉を受けたシンは少し微笑みながら返した。
「人間はいくら愛する人がいても、老いと言う運命の楔が死と言う分かれの道に誘ってしまいます。
だからこそ……その時がくるまで愛を深めあい、だからこそ、人間達の愛は美しいのだと感じます。」
「そうだな。……
俺達にその楔はないが、その人間たちと変わらぬ深い愛を、お前に与え続けたい。」
「ユダ……////!!」
ユダは赤らむ顔を隠そうと必死になっているシンを優しく抱きしめた。
二人を見守るように月光が優しく降り注ぎ、風が二人をいとおしく包んでいた。