D R E A M
□ すみれの日
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宝生菫くんは
すみれのような人である。
「私、すみれって好き」
その日は寒くもなく暑くもなく、ぽかぽかとしたとてもいい日でした。
私は窓際の席に座って、陽の光であたたかくなった机にほとんどうつぶせといった体制で、本を開いていました。
「…え?」
ふたりっきりの教室
私ともう1人は、右ななめ前の席に座っている宝生菫くん
「なんか、かわいいよね。ちっちゃくて、紫で」
「………すみれか」
「…ああー、菫くんじゃないよー」
「わかってる」
そう言ってそっぽを向く。
宝生菫くんは、一見なんだか素っ気ない。
意地っ張りで小難しい。
「でもねー菫くんも好きだよー」
「…ばか」
だけどただの不器用な照れ屋さんであるということは、いま彼が書いている化学の実験レポートよりも重大な発見にちがいない。
「ねぇ、ねぇ」
「なんだ、お前さっきからうるさい」
「じゃあいいや」
宝生菫に関する観察日記なら、レポートを出したことの無い私でも100枚は書けそうなの
「……なんだよ」
「えー?」
「言えよ。…聞いてやる」
宝生菫に関する記述、押してダメなら引いてみるは有効である。
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