D R E A M
□ ケンカ
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「先生、開けてよ」
「絶対イヤ」
ひとつドアを挟んだ向こう側には綾芽くんがいて、私は、ドアに背を向けてしゃがみこんでいる。
どうしてこんなことになったのか、思い返せばすごくくだらない気がして思い返したくもないけど、とにかく私は怒っているのだ。
「絶対?」
「絶対」
「アンタの絶対はあてにならないからな」
ドア越しに聞こえるこもった声もいちいちしゃくにさわる。
そう言われれば、綾芽くんの言う絶対には説得力があるよなあ、とか少し思ってしまった自分の頬にびんたする。
「何をそんなに怒ってんの?」
「あっち行け」
とんだ秀才で何でもできるくせに、いまいち私というか乙女の気持ちをわかってないところがある。そのくせ全部わかったような口きいて、それがけっこう図星だったりするからもう嫌でたまらないの!
「なんで機嫌悪いのか言えよ」
「綾芽くんには一生わからないですもういいからさようなら」
「なにそれ」
向こう側で、綾芽くんも同じようにドアにもたれて座り込んだらしい音がした。
私たちの背中と背中はあと数センチで触れるけど、ドアがそれを遮る。
私は膝を抱えて、絶対に開けるもんかと、意思を固めていた。
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