D R E A M

□朝の双子
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◆菫くんの朝




目覚ましより先に寒さで起床。

(みのむしは放っておこう…)

起こそうとしても無駄なので自分の支度を始める。


「…すぅちゃん…」
「と、とも、起きたのか!?こんなに早く!」
「珠美ちゃぁん…それすぅちゃんじゃないよ、もやしだよ、フフっ…むにゃむにゃ」
「………。」


起きろ、と枕でともの頭をごりごり押した。うんうん唸っていて起きるかと思うと、3秒後にはすやすや寝息をたてる。


「知らないからな。今日ばっかりは、遅刻しても、知らんぷりするからな」


返事はない。

顔を洗って、髪をとかして、着替えて歯を磨いて。俺は何をするにも、時間に余裕を持つ習慣がついた。ともを起こしに来なくちゃいけないからだ。でもなぜだ?なぜこうなる?ともがこんなねぼすけじゃなければ、その分俺の時間がたっぷりとれる。あと30分は眠れるし、出掛けに『恐竜番付シリーズvol.4プテラノドンEX(直立タイプ)』を眺めてから学校に行くこともできる。


「とも」


部屋に呼び掛ける。直接ゆすっても起きない奴がこんなところから声をかけたところで起きるはずもない。


「もう行くぞ。ほんとに放っとくぞ」


ローファーに片足を突っ込みながら、もう一度声をかける。当然起きない。今日くらい、置き去りにしてみるのもいいかもしれない。毎日ともを起こす俺の苦労を少しはわかってほしい。ばかだのうるさいだの言われながら起こさなければいけない俺の気持ちをわかってほしい。


「いってきます…」


ひとりでつぶやく。これもとものためなんだ。一人でも起きられるようにならなくては。だいたいともは、テスト勉強もろくにしないし、提出物は出さないし、授業態度だってきっと良くはないだろう。せめて出席点ぐらいは稼がないと、困るのはあいつなのに。どうするんだ、卒業できなかったら。高校4年生なんかになったりしたら。そのうち学校をやめるなんて言い出したら……


「おい、とも!」


結局俺はUターンして、駆け足で部屋の扉を開けに行く。ああ、今日もこの頑固なみのむしを引きずって学校に行かなくては。布団をはぎとると、バカーハゲーと言われたけれど気にしなかった。なんとでも言ってくれ。





笑っておくれよ、プテラノドン!



(鬼になれない草食お兄ちゃん)





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