D R E A M

□桔梗詰合
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◆触られてドギマギしちゃう先生



ひんやり。桔梗先生の右の手のひらが私の左頬に触れたとき、そんな感覚がした。まだ冬の終わらない肌寒い季節、桔梗先生の指が冷えていたのかもしれないし、私の頬が火照っていたのかもしれない。私は末端冷え性だけど、体が温かいとよく言われるから、きっと私の頬も熱かったんだろう。

そんなことよりも問題は、桔梗先生の手が私の頬をすくうようにぴったりとそこにあることだ。さっきまでコーヒーの香りの話をしていたはずなのに、何の脈略もなく、桔梗先生は私に触れて私をじっと見つめている。

「………あの…」

声を出したら負けな気がしたけど、何も言い出さない桔梗先生に負けてそう言った。口を開けて声を出す、その動きが、桔梗先生の右の手のひらに直に伝わっていた。ああ、熱くて苦しくて心臓が躍る。

「何を」
「えっ」
「何を、すると思いますか」
「え?」
「このあと」

桔梗先生は無表情のまま、私をじっと見つめたまま、よくわからないことを言った。このあとも何も、今こうして頬に触れられているこの状況が既によくわからない。桔梗先生の手が大事そうに私の頬をなでた。早くなにか言わなくちゃ。

「えっと、あの…つねりますか」
「いいえ」
「うんと、じゃ…叩きますか」
「そんなことするわけないでしょう」
「はあ」
「痛いのが好きなんですか?」
「い、いえ…」

なんだっていうんだ、一体。聞きたいのはこっちなのに。目の前の桔梗先生と頬にある桔梗先生の手のひらと解けない問題に、頭の中がぐるぐるぐるぐる。

「正解は」
「はいっ」
「からかってみただけです」

その時ぱっと手が離れて、いつも通り桔梗先生がくすりと笑った。情報処理がおいつかなくて頭と心臓がパンクしそうだった私は少しほっとした。余韻の残る頬だけが、ああ寂しいと叫んだ。



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