D R E A M
□ 未来予想図
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「乗らないのか?」
後ろから声がしてはっとしたら、エレベーターの前に立っていた。
あ、そうだエレベーターを待っていたんだった。
「またボーっとしてたろ」
声の主は綾芽くん。
あーあ、ぼけっとしているところを見られてしまった。寝不足がたたっただけだと思うんだけど。
「またって何」
「昨日は下駄箱の段差で転んでたろ」
げ。あれも見られてたの。何事もなかったかのように颯爽と歩きなおしたのに。
言い返せなくてむくれていたら、綾芽くんがフッと笑った。
「…赤ん坊」
「は?」
「結婚してお前の子供が生まれたら、どっちが赤ちゃんかわからないな」
綾芽くんはクスクスと楽しそうに笑って言った。いつか綾芽くんと未来の家族の話をしたのを思い出した。
「例え話だろ。照れるなよ」
「べ…別に照れてないでしょ」
綾芽くんがいて、赤ちゃんが生まれて、どんなかんじなのかなぁって、思っただけだよ。
「…綾芽くんは、いいパパになりそうだね」
なんだか目に浮かんで可笑しいな。静音ちゃんといるときみたいに、やわらかく笑うんだろうな。
「子供にはすごく優しそうだもん、綾芽くん」
「お前にだっていつも優しいだろ」
「うそだぁ、意地悪言ってばっかりだよ」
「…お前」
「うそ、うそ」
知ってるけど
綾芽くんのすごく優しいところ、いっぱい
こんなにあったかい気持ちで笑いながらこんな話ができるなんて、出会った時からは想像つかない。
綾芽くんの笑顔の1つ1つがどれくらいうれしいか、伝わってるといいのになぁ。
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