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□時と心の繋がり
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「どうした?‘悪魔’でも気持悪くなるのか?(笑)」
「何呑気な事言ってるんですか!
あの人‘錬金術師’のムサシさんじゃないですか!」
「錬金術師?」
「そうです。ある日突然お城にやってきたと思ったら不思議な術を使いハーリーさんに気に入られ今では次期婦人候補です。
今までハーリーさんの周りで起きた呪いも彼女がやっていると言われています」
「お前よく知ってるな」
「まあ、一応‘悪魔’ですから。
って、感心してる場合じゃないですよ」
「何がだ?」
「彼女に見つかったって事は死を意味します。
呪いからは誰も逃げられません」
「さっきから呪いって!
いいか!俺は呪いなんて信じない」
「僕の存在は認めたのに?」
「だから俺は自分の目で見て自分の耳で聞こえる物は信じるんだ。
さあ、誰か来る前に逃げ……」
しかし後ろを振り向くとムサシが立っていた。
「ヒッ…い、いつの間に…
他の人は?」
するとムサシは答えずにコジロウに何かを差し出す。
それは食べ物だった。
「これ俺に?」
ムサシは首を縦に振った。
「さっきの話本気にしたんだ。
まあ、いいや。いただきます」
「待ってください。毒が入ってる可能性もあるじゃないですか!」
「モンド!」
コジロウがバレないように小声で話す。
「お前の姿や声は他の人には見えないんだから。
突然変な事言うなよ」
「だって…」
「俺は俺の言葉を信じて動いてくれた人間の事を信じる」
そう言い一口食べる。
「…………うん!美味しい!
全部食べていいの?」
再び首を縦に振る。
コジロウは言った通り全部食べる。
「ごちそうさま。生き返ったよ。
あっ、俺コジロウ!よろしく」
そう言うとムサシの手を握り握手した。
「……………」
コジロウが何かに気づく。
ムサシは急いで皿を片付けると立ち去ろうとした。
「待って!明日また来ていいか?
一緒に話がしたいんだけど…」
ムサシは今度は首を縦にも横にも振らずに去っていった。