図書館

□仮面の魔法使い
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パーティは基本的には自由に声をかけるという形式である。


コジロウは一人で壁にもたれかかっている。


そこに一人の女性が声をかける。


「今一人ですか?話しませんか?」

「………すみません。今一人でいたいんです」

「そうですか…」


女性が立ち去る。


コジロウはこのように声をかけられても全て断っている。


(何か調子おかしいんだよな。どの娘に話かけられても話す気がしないし。
自分から話かける気もおきないし)


理由は分からないがここにいると更にイライラが増すようだ。


「帰ろうかな」


その時再び声をかけられた。


「今いいかしら?」

「あっ、すみません。俺…」


声をかけた女性の顔を見て息をのんだ。


(ムサシじゃないか!)


髪型を変えているがムサシだとすぐ分かった。


「どうしました?」

「いや、その…」


コジロウは顔を横に向け声色と話し方を変える。


「いや、私は忙しいので…」

「そうですか」


ムサシは少し残念そうな顔をして立ち去る。


(バレなくて良かった。
でも俺は気づいたのにムサシはまったく気づかないんだな。
仮面で顔を隠していたとはいえ何か悲しいな)


ムサシの方を軽く睨む。


するとムサシが足を引きずっているのに気づく。


(ああ、慣れない靴履いているから靴ずれをおこしたんだな)


するとムサシがつまづき転びかける。


コジロウは慌てて駆け寄りムサシを支える。


(しまった。反射的に助けてしまった)


慌ててムサシから離れる。


「だ、大丈夫ですか?」

「ええ。平気よ」


しかしその顔はどこか寂しそうだった。


コジロウはその顔が気になってしまい声をかける。


「………あの、今話してもいいですか?」
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