図書館
□変化する気持ち
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ピアノを弾くのを止める。
「気持ちよかった〜」
気づくと雨がやんでいて月が出ていた。
ふと廊下を見ると誰かがこっちを見ている。月の逆光で顔がよく見えない。
しかし着ている服や雰囲気で分かった。
「ムサシか?」
ムサシの方に歩いていく。
ムサシも俺の方に近付いてきて俺達は大広間の中央で出会う。
「聞いてたのか?」
「ええ、まあ。ピアノも習っていたの?」
「ああ。小さい頃から毎日。でも、久しぶりで腕が落ちたな」
「私、技術とかそういうの分からないけどあの曲は好きよ」
俺は驚いてしまった。
今までピアノを弾いてもまず最初に言われるのは技術に関する事だ。
なのにムサシは自分が感じたままに言ってきた。
こんな当たり前の感想がすごく嬉しい。
それと同時に気づいた。俺が自由になったのはロケット団に入ったからじゃない。
ムサシに出会えたから…。
ムサシ達に会えて俺は自分の気持ちに素直に生きる事を教わったんだ。
どんなに見た目が変わってもこの自由な心は変わらない。
「な、何よ!何か変な事言った?」
「いや、そんな風に人から言われたの初めてだから。ありがとう。すごい嬉しいよ」
「ピアノ好き?」
「昔はそんなんじゃないけど今は弾いていて楽しかったな」