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□二周年感謝祭
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その日コジロウの様子がおかしかった。
マネネが話かけても相手をしない。


「コジロウ…………」

「えっ!帰って来た!」


ニャースが心配して声をかけてもトンチンカンな返答しかしない。


二人の間に変な間が出来るがニャースがため息をつき沈黙を破る。


「ニャー。まだムサシが出掛けて一時間も経って無いニャ」

「ウグッ」


あまりにも直球な台詞がコジロウの胸に刺さる。


しかし動揺しているのをバレないようにクールに返した。


「別にムサシが誰と出掛けようと関係無いぜ」

「ニャー。もはや似合わないクールキャラを。
別にニャーは一緒の男の話題なんて振って無いニャ」


多分何を言っても墓穴掘るのは自分でも分かる。


「別に俺はムサシが誰と出かけたって………」

「いつも通りの目に涙を浮かべヘタレで言っても同じニャ」


ニャースは呆れてしまい去ってしまった。


「はあ〜……………」


今度はコジロウがため息をつく。
自分の情けなさに呆れて。


「分かってる。分かってるよ。
俺が心配する立場では無い事くらい」


さっき街でムサシを呼び止める男が現れた。


会話からして彼女の昔の知り合い。


昔一緒に居た人間との再会。
それは自分にだって時々ありえるシチュエーション。


しかしそれとは少し違う事に気づいてしまった。
彼女が彼を見る目が友達を見る目とは違う。


そこには特別な感情があった。


「俺…………ムサシが………隣から居なくなったら……」


近くに居るニャースやマネネに聞こえないように声を押し殺し膝に顔を埋めて呟く。


しかし震えが止まらない。
何も無い手を憎らしげに見る。


「掴んでいたい。彼女の手を…………気持ちを」
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