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□すべての人に捧げる愛〜アベ・マリア〜
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そして日は流れクリスマスイブ当日。
ムサシは街中を歩く。


「はあ〜、疲れた。でも今日みたいな日はバイト代が弾むから良いのよね♪おかげで当日現金手渡し♪」


そして冷静に周りを見る。やはり当日と言う事もあり町はクリスマス一色。


「まったくカップルやら家族連れやら。みんな、暇ね。
でも………一番意味が分からないのはあいつよ」


あの時の続きを思い出す。
ムサシはフリーザーも驚く程冷たい目付きで‘寝言は寝てから言え!’と言い放ちその会話を断ち切ったのだ。
そしてその時の、‘俺は用意して待ってるから’と言ったコジロウの顔が頭から離れない。


「……………………何も泣きそうな顔をしなくても。
たかがプレゼントで……………そんなに重要かしら?
…………………クリスマスイブにプレゼントなんてあげた事も貰った事も無いから分からないわ」


そう言うムサシの瞳に寂しい影が現れる。
しかし同時にその瞳に、とある品物が映る。


「……………………これは」


手に取る。それはチョーカーとサングラスのセットだ。


「そういえばコジロウ、これ欲しがっていたわね……………。
なんでも今売れているロック歌手がつけてる流行り物であいつにしては珍しくその歌手のかっこよさに惚れこんでたんだっけ?」


一瞬瞳の光が優しくなる。
しかしすぐに我に返る。


「な、何を言ってるのかしら。何で、私がコジロウなんかに。
そうよ。そんなお金………」


しかし値段を見ると手頃でバイト代からやりくりすれば何とかなるのが分かる。


「違う!そう言う問題じゃない!
何でイベント事に便乗しなくちゃいけないのよ!
これじゃ、あの馬鹿を………喜ば………せる………」


言うと同時にコジロウの嬉しそうな顔が頭に浮かぶ。
とても幸せそうでムサシに感謝の眼差しを送っている。
ムサシ自身のプライドとの戦いが始まる。


「ウッ………ま、負けてたまるか。私は絶対プレゼントなんて………」


そう言い足を動かす。
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