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□春夏秋冬
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テーマ『バイト』(春、冬のみ)
春
春と言えば花見。
ロケット団も参加しているが普通とは参加の仕方が違う。
『毎度〜。お弁当を届けに参りました〜』
今回はバイトでお弁当の配達をしているのだ。
しかし相手の多くはすでに酔っぱらってる。
そのせいで酒を進めて来る。
「じゃー、一口だけ♪」
ムサシは上機嫌で受け取ろうとする。
しかしコジロウはそれを妨害する。
「駄目!今仕事中なんだから」
「一口だけならいいじゃない」
「ムサシが酔ったら花見会場が地獄となるから駄目」
しかし向こうは飲むまで解放しようとしない。
「しょうがない」
コジロウが一口飲む。
「これでいいだろ。行くぞ」
しかしそれは一回では終わらなかった。
行く度に同じ光景が繰り返される。
その結果………。
「俺が……代わりに…」
「しっかりしなさい。
もう終わったわよ」
コジロウは立って歩く事も出来ずムサシが支えている。
「事情が事情だけどコジロウがこんなに酔うの初めてかも」
支えているのも疲れてきて桜の木の下に休ませる。
「まあ、ここで花見とするか」
桜の花を見てるとコジロウが自分の名前を呼ぶ。
手招きしているので近付く。
「ム・サ・シ♪捕まえた♪」
突然抱きついてきた。
「え…ちょっと離れ…」
「ムサシ、大好き♪」
その一言でムサシの顔は真っ赤になる。
慌てて離れるとコジロウはそのまま寝ていた。
「Zzzz…」
「コジロウって酔うと……こうなるんだ」
その後、花を見る余裕は無かったそうだ。
冬
ムサシはその日バイトが忙しく帰るのが遅くなった。
「お疲れ様でした!」
外に出ると冷たい風が身にしみる。
ムサシは余りの寒さに体を震わせる。
寒さもあり急いで帰ろうとしたがすぐに足を止める。
そこにはコジロウが立っていたから。
「コジロウ!」
「ムサシ、バイトお疲れ様」
「何やってるの!?」
「いや、俺も今終わった所で…そしたらたまたま通りかかったら…」
しかしそれは嘘だとすぐに分かった。
本人は我慢しているつもりなのだが体中震えている。
唇も青紫色に変色してる。
(第一今日はバイトが休みだとか言ってた気が……)
そこで気づいた。
帰りの遅い自分を心配して待っていた事を。
ムサシは急いで自分がしているマフラーを外しコジロウの首にかける。
「えと、私…このマフラー好きじゃないのよ。
だからあげる」
「ムサシ…」
「お腹空いたわ。近くの店で何か食べましょう」
「でも…そんなお金が…」
「今日バイト代が入ったからおごってあげる!
それにすぐに体を暖めたいの!」
そう言いムサシはコジロウの手を掴み引っ張って行く。
その手も氷のように冷たく体が反射的に震える。
「ムサシ、震えているけど大丈夫か?」
「大丈夫だから!行くわよ!」
(それに寒いどころか心が暖かいわよ。
心配なら自分の心配をしなさいよ!)
そう思いながらムサシはコジロウの手を離す事無く進んで行った。