図書館

□入れ替わり
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暗闇でコジロウが呟く。


「そろそろ時間だ。
引き上げるぞ。




聞いているか?ムサシ、ニャース。


これ以上そこに居ては危険なんだ。


頼むから指示通りに。




じゃないと………あいつが戻ってくる。




だから…………早く。
本当に……………さぁ。」

『うるさい!!!!!』


怒鳴り声と同時にハリセンがコジロウの頭に降り注ぐ。


「痛って〜。」

「おミャーは慌てすぎなのニャ。」

「だ、だって。」

「分かってるニャ。


ルミカがここに来るまでには撤収するニャ。」


そこはコジロウの別荘の一つ。
お金が無く屋根がある所で待避中。


「さっき管理人さんが言ってただろう。


あいつは隣町に居るんだ。
気づかれたら最後。高速ジェットに乗って数秒でここに来る。」

「まあ、否定できニャいニャ。」

「あれ?
そう言えばムサシは?
さっきまであのソファーでゴロゴロしていたのに。」

「多分冷蔵庫の食材漁っているニャ。」

「人が言っている側から。


たまにはガツンと言ってやる。」


意気揚々と扉に向かう。




しかし。


「ニャ―、そこにムサシが投げ捨てたジュースの缶が。」

「えっ。」


遅かった。
足を取られる。




前のめりにつんのめり近くの本棚に顔から突っ込む。


「ガツン!!!!!」



変な擬音と共に倒れてしまう。
その衝撃で一冊の本が落ちた。




「痛ててて。」

「大丈夫ニャか?」

「大丈夫じゃニャい。


んっ?」


気づくと一冊の本が手にあった。





その本のタイトルは「恋愛の魔術(おまじない)〜相手を自分の思い通りにする為の十個の力〜」と書いてあった。




空気が凍る。


先に動いたのはニャース。
一歩後ろに下がる。


「コジロウ、おミャー………こんな本を。」

「えっ!!!
違う。


これはルミカの本だ。」


裏を見ると子供の字でルミカと書いてあった。


「俺が婚約破棄宣言をした後もしつこく別荘に遊びに来ていたからな。


もしかして後、数日家を出るのが遅かったらこのおまじないの餌食に。」

「ニャにを言っているのニャ。


こんニャのジャリンコのお遊び程度の本だニャ。



ほりゃ、ニャかみを見るのニャ。
相手と自分の中身を入れ換える。
なので彼を自分の思い通りに動かせる。


馬鹿馬鹿しいニャ。
ニャ―は時々人間が嫌になるニャ。」

「俺だってこんな訳分からない物信じないよ。


ほら、返せ。
こんなのしまうぞ。」


そのページを開いたままニャースからコジロウの手に渡る。





その瞬間だった。




二人の視界が一気に変わる。
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