短編

□LOVERS
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こんにちわ。
元気そうで良かったよ。私はね、私は楽しく過ごしてるよ!そういえばこっちのお友達が、みんなに会わせろばっかいうの!友達よりも、私が会いたいな。あのね、私の学校は、みんな仲良くて、先生も友達みたいで毎日楽しいよ。この間の遠足で、おにぎり落とした子がいて、それがコロコロ転がって本当おかしかったんだから。そっちはどう?相変わらずみんな賑やかなのかな?
…ね、ルフィ。なんで私、みんなと離れたのかな。別に後悔はしてないの、学校は楽しすぎるよ。だけどやっぱり、みんなと笑いながらすごしたあの日が鮮明に思い出されて。無性に戻りたくなるの。ルフィ。……会いたいな…







長々と書いた文章、きっとルフィは見もしないんだろうな。返ってくる返事は全く違う内容で、だけどそれでも私はすごく楽しく読めるの。会いたいのは本当で、だから私、1年過ぎたころにメールのやりとりしてる。私は長い文章で送るのに、ルフィったらいつも短いの。たまに意味の分からない絵文字使ったり、変換間違いがよくあるけど、それも好き。


3日前に送ったのに3日間返事が全く返ってこなかった。今まではすぐに返ってきたけど、このメールに関しては返事がくるまでに3日、かかったの。嬉しくて開いてみると、真っ白な背景に黒い文字、一行。「今からそっちに行く」
絵文字も何も使われていない文章に少しだけ心臓が動いた。そして必要な荷物を取って駅まで走る。


鼓動が高鳴っているのは走っているせいか分からないけど、今から久しぶりに会う彼のことを考えると走っている辛さなんて忘れてしまう。かかってきた電話からはルフィの笑い声。あまりに突然だったから馬鹿って言ってやった。本当馬鹿、なんで連休の一番最後の日にやってくるのよ、本当馬鹿。


だけどね、私待ってるからね。
最初に言ってあげる言葉は何にしようか。久しぶり?いらっしゃい?そんなありふれた言葉、きっと彼は待ち望んではいない。鼓動だけがだんだんと速くなる。


ルフィの乗った電車がやってくるまで、あと5分。


走れ、ラバーズ



見慣れた赤いシャツが目に入った。キョロキョロ見渡すその姿に、人目を気にせず抱きつくと、驚きもしないでルフィは笑った。


「電車乗れた?」

「あぁ。サンジに聞いた」


まさかの第一声がこれなんてね。頭に置かれたルフィの手が好き。背中に回るルフィの手が好き。頭上から降ってくるルフィの声が好き。

そうだな、次は愛の言葉を言ってみよう。どんな反応をするんだろう。見たこと無いくらい顔を真っ赤にしてくれるかな。




届け、ラバーズ


「ルフィ、会いたかった…大好き」

「…俺もだ!」


あんまり嬉しそうに抱き締めるもんだから、少しだけ苦しくて、人の目が痛くなった。期待とは全く違ったけど嬉しそうに笑うもんだから、なにも悲しくない。

そっと離れて、ルフィの顔を見てみると、離されたのが不満だったのか不機嫌な顔の彼。これを元に戻すには難しいけれど、昔サンジくんに習ったの。ルフィの機嫌が悪くなったら食べ物屋さんに連れて行けって。ご飯食べに行こうって言うと、案の定これ以上にない幸せそうな顔をした。


ここらへんは私の方が詳しいから、ルフィの手を引っ張って先を歩こうとする。……あ。今日言おうとした一番大切な言葉を、振り返って伝えてから。



「ルフィ、お誕生日おめでとう」





ルフィHAPPYBIRTHDAY!


20100505


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