短編

□もう、涙は枯れた
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574話ネタバレ注意!

















ちょっと昔の話。初めて会ったのは小さな港町の食堂。隣に座ったあなたが面白くて、お話したのが最初の出会い。仲間になれよって言うもんだから、冗談半分でOKしたの。白ひげのことだったなんて思いもしなかった。

ほんと、いつも賑やかで心配ばっかりかけて。大丈夫だって分かっているのに、怪我してるんじゃないかって不安に怯えてた。久しぶりに泣いたあの日、約束したよね。心配いらないって。



「…エース?」



やだ、マルコ隊長何泣いてるの。そんな顔してたらエースに笑われるよ。ジョズ隊長まで…やだな、みんな泣いて。…初めて見た、みんなの泣いてる姿なんて。



ねぇエース、みんな泣いてるよ?
ねぇエース、なんで寝てるの?
ねぇエース、あなたの誇りの背中のマークはどうしたの?




「エー、ス」



口から出た言葉が枯れるように消えていく。騒がしかった戦場が無音になる。耳が塞がるというよりかは、全ての音が閉ざされた、という表現の方が似合っているか。無色無音の世界。



約束、したじゃない。
私のこと置いてかないって、私のこと置いて死なないって。あなたは強いんでしょ?早く起き上がって、今はゆっくり安静にしてて良いから。あとで目を覚ませばいいから…ねぇ、だから、




(…死なないで、エース)


もう涙は出ない。
枯れ果てたのだから。





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