短編

□1月1日
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「…お前、なんだその格好」


「何って…着ぐるみですよ、ガオ!」


「…」


「新年あけましておめでとうございまーす!」



いや、そこじゃなくて
なんて言う隊長の声に返事はしなくて、先日、この日の為に買ったトラの着ぐるみを体に身につけて、隊長の横に座った。



「それ持ってたか?」

「買ったんです!ポカポカですよー」


今まで見てきた他の着ぐるみと違ってさわり心地がいい。前たどり着いた島のお店のお洋服はとても素材に凝っていて、そのせいか着ているだけでポカポカする。



「なんでトラなんだよ」


「大人の事情です」



着ぐるみって可愛いんだけど足が短いのが難点だ。座ったは良いとしても足部分が短すぎて座った心地がしない。

途中、隊長が小刻みに震えてる気がして、横を向けば大きく笑い声をあげた。



「お前、足短いっ…!」


「げ!た、大変なんだからそんなこと言わないでくださいよ!」



立ち上がった直後に足の短さからか、ぐらついてまた座り込んでしまった。これは痛い、恥ずかしい!
隊長がまた笑って、短いを連呼する。大変だって言ってんのに!



「まぁそれは置いといて」

「や、謝ってくださいよ」

「お前なんか忘れてねェか?」



…はい?

忘れてるって?一体何を…昨日するべき事はちゃんとしたはず。カウントダウンはきっちり10秒前から数えたし、お蕎麦もきっちり食べた。ただ途中で皆で取り合いになって蕎麦が短くなってしまった。



「…なんかありましたっけ?」

「…」

「…あ!」



声をあげた瞬間、隊長の顔が明るくなった気がした。でも私は逆に暗くなってしまって。



「…昨日賞味期限のお肉食べ忘れた…」



あれとっても高級肉だったんですよ、あとでコックさんに料理してもらおうと思ってたのに…
浮かない私の隣で、隊長はまた呆れたような、暗い表情に戻ってしまった。そんな隊長の表情が気になって、これじゃないんですか?と質問してみる。



「なんでもねェよ」

「うそだー隠さないでくださいよー」



隠されるとスッキリしないんですよ!
そっぽ向く隊長の腕を掴んでみる。何度も押して、観念した隊長の口からは蚊の鳴くような返事が返ってきた。普通なら聞き取れないような小さな声を必死に聞き取って並べた単語は、誕生…日?



「うぅわぁ…」

「なんだよ」



すっかり忘れてた…!だ、だからさっきマルコ隊長やナースのお姉さん達がケーキやらお酒やらクラッカーの用意をしていたのか!…そんなこと全く知らずなんもお手伝いしなかったよ…


か、完全に怒ってるよこの人。ちょっと忘れてたくらいで…いや、私が完璧に悪いんです、すみません隊長。



「わ、私どうしたらいいですか?」

「知らねー」



なんて人だ、可愛い隊員が困ってんだからどうにかしてくださいよぉ!どうしよう、あぁどうしよう!悩みぬいた末に考え出した答えは自分でも恥ずかしくなるような答えだった、と思う。


「わ、私に食べられて見ますか?」


ガーオ?
「ばーか」
そう言った隊長は元の笑顔に戻っていた。待っててくださいね、あとで素晴らしいものプレゼントしますよ!(まだ考えてさえないけど)




隊長お誕生日おめでとうございます!
悩みぬいた末のトラと着ぐるみ
現パロのようなそうじゃないような
20100101


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