短編

□すすす、すきやき?
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泥門の「ヒルマ」さんがやっていた勧誘方法は物凄く無理矢理だった。現に、栗田くんの胴上げ(的なもの)で既に何人飛ばされたんだろう…あ、これは「ヒルマ」さんじゃなくて栗田くんのパワーのせいか。だけどそのたびに携帯を渡せることもなく、次の人へとターゲットは変わる。携帯番号をゲットしてアメフト部に勧誘、なんて強引な。雲水くんも最初は不安半分期待少しだったのに、不安半分呆れ半分期待ちょっとになってしまった。



「おめぬらばー!!」



…7人目、
驚きながらも本日飛ばされた人数を頭の中で計算する。
7人目も軽く飛ばされた。あぁ、可哀想に。2年程前の、西武選手の付き添いとして見たクリスマスボウルの時よりも力強くなって、それから更に大学での猛練習を積んだんだもの。炎馬大アメフト部のマネージャーとして私が一番知っている…はず。

携帯携帯、これで電話…なんかと呟く栗田くんの目の前にさっき飛ばされた人物がふわりと着地する。陸、だ。最新型の機種を手に、次の瞬間に泥門出身のモンタくんと一緒に栗田くんの腕の中にいた。先週お揃いで買ったスライド式の新しい携帯電話。シルバーが陸にとっても似合ってて、綺麗に光っていた。私の薄いピンクの携帯とあれほど隣に並べたのに、まだ並べたりないくらい。



アイシールド21ことセナくんも入ってくるらしく、ここの4人に合わせて、先にアメフト部に来ていた水町くんに同じ歳のコータローくん。栗田くん達に感化されて力を付けてきた先輩や同級生。マネージャーの私がいうのも何だけど、今年は最京大にだって互角に渡り合えるかもしれない。なんてやっている間に、今日が試合らしく、驚いた私達は声をあげる。どうして雲水くんが知らないんだろう、勿論私も聞いてないよ!試合のスコア表あったっけ、慌てふためいたと一緒にゆっくり足を運ばせようとした。



「先輩!」



たった数歩歩けば近づく距離を走る陸。



「陸、合格おめでとう…って言っても陸なら大丈夫だったよね。それに炎馬って誰でも受かるし」

「はは、ありがとうございます」



いつの間にか見上げるようになった背は、初めて見たときからどのくらい伸びたんだろう。大学生の平均身長としては低いと思うけど、私に比べるとれっきとした身長差。



「びっくりしたよー、炎馬に最終決定したとき」
「前から言ってたじゃないですか、あのときから決定してたんですよ?」
「私が炎馬に決めたとき!?」
「はい」
「えー!早いよそれは!…てっきり打倒最京かと思った」
「それもあるけど」
「ほらね」



常に強い相手と戦いたくなるのが陸。自分の決心は絶対に曲げないで、努力をする分だけ伸びるんだ。これから先もきっと陸は、打倒最京に向けて猛練習して、今のメンバーで挑むんだろう。いつか本当にその夢を実現して、そしてその時にも近くで一緒に喜んでられると、いいな。



「…嬉しいな。こうやってまた毎日陸と会えるんだもん」
「…俺だって」



照れた顔をすると、それに応えて陸も優しく微笑んでくれた。なんだか初々しいような雰囲気に飲み込まれる。


「炎馬に来たのは打倒最京っていうのもあるけど、やっぱ先輩に会うために来たのが一番なんですよ」
「…うん」
「俺、もう先輩と離れたくない」



大学はキャンパスが広いし人も多いから、学内で会えるなんてめったに無い。それに高校に比べて勉強が大変だし、部活だって更に忙しくなる。マネージャーと選手っていっても毎日が練習だから遊べる時間もあまりない。でも、陸が高校生で受験生で、会えなかったときよりかはまだマシ。学内で会えなくても部活がある。約束すれば休み時間だって会える。



「で、あの、順番逆になったけど先輩に伝えたいことがあって」
「…」
「今更なんですが、あの」
「…ん?」
「あの…す、すき、す…」


すすす、すきやき?


「どうしたの陸?すきやき食べたいの?」
「ち、違います!」

(好きです、付き合ってください)



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設定的には後輩陸×先輩ヒロイン
付き合ってるわけじゃないけど
お互い好きな関係です(^0^)
これを基にした長編作りたい

091206

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