真っ暗だった空にはだんだんと明るさが見えてくる。とは言ってもまだまだ薄暗いには変わりなくて、世の中のいい子はまだ寝てる時間であって。その中をこうやって歩いている自分が何だか惨めに感じてきた。人気のない道をただ一直線に進む足に重さは感じなかった。むしろこれが私にとっての普通なのだ。何事もなかったかのように戻って寝ると海の上。ただ、一つを除いて。
「・・・隊、ちょ・・・」
眠さと疲れなんてもう忘れた体。新しい島に着けば酒場で飲んで遊んで帰って寝るだけのそんな生活。そこで、私の帰りを変わらず待ってくれるのが二番隊隊長のエース隊長。道に迷ったときや船から出遅れた時、そしてこんな風に・・・酒場で一緒に飲んでた人に誘われたままふらふらとついて行き、何の気も生まれずに帰った時でさえ、私を待っていてくれる人。
ただ、そんな隊長の顔がいつになく寂しそうに見えたのは気のせいだろうか。
「今日はどんな奴だ?」
「イカサマ、さん」
さん、なんて付けるほどすごい人じゃない。トランプが得意だとか言ってた割にはうちのクルーの方が上手だし、優しさならエース隊長の方がずっとずっと優しい。
向かい合う彼の顔は、まだ空が暗い上に俯いていてよく見えない。女の私とは違う、大きくて逞しい男の人の体。今まで見てきた人のなんか比べものにならないくらいに男らしくて、胸がキュッとする。
刹那、その体との距離はなくなり、暖かい腕が私の背中へと渡っていた。
「・・・隊長・・・っ」
「・・・大丈夫だ」
拒むことを忘れていた。こんな行動に慣れた私には忘れられた行動かもしれない。でもそれは、相手がエース隊長でなかったらの話なのだ。拒むことは出来た気がする。ただ、そうしなかったのは私の心の中の何かがそれを忘れさせたから。抱き締められたあとに発せられたその声が少し震えていて、顔を埋めた。そして出そうになった涙を押さえ込む。
「俺がいるからよ。どこにも行かねーから・・・俺がいるから」
我慢していた涙が溢れ出す。手は隊長の腰に廻してて、大量大粒の涙がボタボタと零れ落ちる。
「いい加減俺にしな」
廻した手に力が入る。ぎゅっと握り締めた拳が、私の答え。
寂しさから愛することを忘れ、その寂しさを埋めるべくいろんな人と一緒にいた。一回キリで切れる関係から寂しさを埋めるものを得ることは出来ない。 だけど、そんな私の帰りをいつも待ってくれる隊長だけが唯一、寂しさを忘れている相手だったのかもしれない。
こんな私を愛してくれる貴方に惹かれていた。
抱き締め合う、大切な人とこれからも一緒にいたいと思うのは、我が儘ですか?
吹き返す恋心
-------------------- エースと大人な恋愛! エース大好きです← 次は微ギャグ的な甘いの 書きたいです!!;
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