短編

□進路表にサイン
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頭が痛い。

ミーンミンミン、ありきたりな声を聞きながら制服に着替えて荷物を持った午前10時。


夏休みに入ってから早4日目。ギリギリで朝9時起き、夏休みくらい遅くまで寝かせろよなー、まあ結局は暑くて起きちゃうんだけどね。そういうのは気分の問題だよ気分の。しかも昨日クーラーききすぎたせいか朝扇風機あたってたせいかタオルケットを蹴飛ばしたせいか頭が痛い、風邪を引いてしまった。


ああ、暑い暑い。

通りかかった保育園からツンと懐かしい薬剤の匂いがした。小学生ぶりの懐かしさに目を引かれるとちょうと園児はミニプールの真っ最中。羨ましいなー子供は、プールなんかすぐに作れるし大人に作ってもらえるしね。高校生だったらプールってもん作れねーよ全く。ビニールプールでどうすんだコラ。座るだけで泳げないじゃないですか。水かけあいっこしたら終わりだよ?あーそうだ、家帰ったらお風呂に水溜めよう。水着なんか着ないからプールって感じしないけど水風呂入ろうとりあえず。





「てなわけで早く終わらせてくださいね」


「アホか」


なんなのよー、坂田め!
いつもなら銀ちゃん(はーと)、先生(はーと)、銀八せんせーい(はーと!)って呼んであげるけど今日は無理!腹立つ!アホはお前だ、アホの坂田め!お前なんかパフェというフルーツで出来たプールに入って沈んでしまえ!そして一生浮いてくるなよ!



例のパフェプールに溺れちゃったアホの坂田(これ今日命名)は問題である進路票を出してきた。つまりこれは進路相談会という名の夏休み特別補習であって、別名Z組オリジナル夏季特別進路個人面談という言わば二者面談だ。ちなみにZ組オリジナルというのは私が考えた。

プールに溺れたアホの坂田(長いから省略)はさっそく本題に入ったと思ったら「あとは自分で考えてねー」なんて、お前それ茶目っ気ねーよ全然。何でジャンプ呼んでんだよおいこらアホの坂田(以下略)!



「Z組には馬鹿ばっかし。担任もこれならクラスもこれだわ」

おーい、アホの坂田先生聞いてますかー?あんたの可愛い生徒は頭じゃどこも選べませんよー?おーい、マジ聞いてるー?


「聞いてる聞いてるブハハ、なんだこれ最近ギンタマンイカしてんなー」


聞いてねェだろお前ェェェ!
ああ、心配だ心配!私の将来より神楽の酢昆布が売り切れるっていう事件より土方君は今後生きてるのかって事より先生の将来が心配だ!もう立派な大人なんだが老後も心配だ!絶対年金払わないだろ、払ってないよな!きっと家にはカップラーメンだらけなんだろう、それ以前におやつばっか買ってご飯食べるお金ないんじゃないか?学級費使ってるの?そりゃないわ。


とりあえず差し出された紙にペンをさらさら動かす。




「・・・はい、終わり」


よっしゃー!待ってろ水風呂!


教室を出たら外の風が気持ち良い。廊下から見るアホの坂田の顔がびっくりしてることは私が一番良く知ってる。

さーて、待ってろ水風呂。


とりあえず私は先生の家庭生活が心配なので、卒業後は先生のお家でお世話になろうと思います。家事は私に任せてください、だからちゃんと働け。


進路決定


これプロポーズだよね?
じゃあ俺は育児をすればいいのか?



ああ、動揺


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