短編

□せいしゅん!
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いつもの駄菓子屋やコンビニには寄らず、今日はそのまま河原に来ていた。何かするわけでもなく、3人並んで座っていた。



今日は(も)、九ちゃんは、東条さんがつれて帰った。本当は九ちゃんも一緒に来たかったけど。




神楽ちゃんは学校に持ってきている酢昆布を手に。妙ちゃんはハーゲンダッツなど持ってきて溶けないんだろうか。あ、溶けてない、スゴ!




高校に入ってから頭が良くなる、とか恋するとか、特に変わった事はなかった。





あー灰色だなぁ。





妙ちゃんは、ブラコンだと銀八先生は言っていた。神楽ちゃんなんか私が見て分かるほどファザコンだ。とか言う私も家族大好きなんだけども。




好きな物って言ったら妙ちゃんはハーゲンダッツ、神楽ちゃんなんか食べ物全般。あ、あと定春とか言ってたな、何だそりゃ?


恋愛は食べ物には劣る。






「死ねゴリラァァァ!」



突然妙ちゃんが立ったと思うと、薄暗くなる前の空、ちょっぴり小さくなった太陽に声をあげた。普段ストレス溜まってるんだな、とつくづく思う。


それに習って神楽ちゃんも立ち上がった。




「死ね銀八ィィィ!」




神楽ちゃんの死ねは一体どこから来てるかわからない。2人で連呼しているけど、はたから聞いたらこれはとんでもない言葉なんだろう。それでも。なんだかよく分かんないけど、それが好き。




未だ叫び続ける2人の横に立つ。口の横に手をあてて、




「妙ちゃんと神楽ちゃんが好きだァァァ!」




語尾は必要以上に伸ばす。




これ以上言ったら伏線がかかりそうな言葉を休めて、こっちに視線が来る。




まんまるした目を再び笑顔に変えて、「嬉しい、照れるわね」なんて声を出した妙ちゃん。



「私も2人が好きネェェェ!」



私の真似をして、神楽ちゃんは再び太陽に向かって叫んだ。

伏線が付きそうな言葉から、花開く言葉へ進化したのはそれからだった。もちろん、私と神楽ちゃんと妙ちゃん、九ちゃんの事を好き、だって。






恋愛に勝てる食べ物は、友情には勝てない。




友情があるなら、それが私たちの青春。


「なんで青春って青い春って書くネ」


「隣の芝生は青かった、だから?」


「どっちにしろ私たちに青なんて似合わないわ」






青いなんてたかが知れてる。
うん、私たちを春色にするんなら、




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