暑い、あーつーいー。
そう思ったいつもと同じなのにどこか違う通学路、生まれて初めて遅刻をしてしまった私は、とにかく急いで走っていた足の動きを止めてゆっくり歩き出す。今まで無遅刻無欠席の私だったが遅刻してみて初めて分かる、やってられるか学校なんて。初めは急いでたものの、暑い中なんで走らなくちゃいけないのかと疑問に感じてそんな考えが頭の中をよぎった。とりあえず今はアイスが食べたい。
なんとなく足を進める先に、よくよく知ってる姿を見つけた。
威勢よく立つ姿に乱れた格好、染めていない真っ黒な髪が本当に不良かと思わされる(失礼だな私)、その後ろ姿は紛れもなくクラスメートの高杉くんだった。あの不良の高杉くんだ・・・ただ、今はそんな高杉くんを見て私は笑いさえ覚える。
だだだって、あの高杉くんが、あの高杉くんが猫のために立ち止まるって!学校にさえ真面目に来ないあの高杉くんが猫に動揺してるって!可愛いを通り越してもはやおもしろすぎる!!さらに高杉くんは座り込んだかと思うと近くにあった草を引っこ抜いた。もしかして猫じゃらしの代わり?そんな草じゃ代わりにもなんないよ高杉くん、ぷぷぷー(げ、本当失礼だ私)!あーほら、猫逃げちゃって。そうそう、あなたが動物に好かれるなんて事は全人類がUFO呼べる並の驚きだから。だから諦めてこっちにおいで・・・あれ?こっち来・・・「おい」
「わわわ!高杉くん!」
あろうことか彼は既に私の真ん前まで来ていた。頭上にある顔を見上げる事が出来ずにそっぽを向く。きっと今顔を合わせたら笑ってしまうから。そして私の未来はないからだ。
「今日は空が青いネー」
「何で棒読みなんだよ・・・てめー何見やがった、ここで何してんだ」
言っちゃ駄目、私の中の何かがそう言う。眼帯男の右目を見たら病院送り、左目を見たら石にされて行方不明、そんな噂を聞いたことがある(自分の心の中の女子高生が話してた)。やだー、私まだ死にたくないよ!
しかしそれ以降、何してただの何か見てたかだの必死に問いかける程うるさい高杉くんを疑問に思い、ちらりと目を動かす・・・あれ、心なしか高杉くんの顔が真っ赤な気がした。そっかそっか。なんだ、可愛いとこあるじゃないか高杉くんって。 ふふふと笑うと気持ち悪ィと刃の刺さるような返事。そんなの乙女に言うなよって感じだけど今の頭の中は高杉くん=可愛いの式しかなかった。
もう誤魔化さないで素直になろうと心に決める。だから高杉くんも素直になろうよ!
「駄目だねぇ、高杉くんたら」
「あぁ?」
「さささ、アイスでも買って屋上にでも行こうじゃないか!」
「・・・何言ってんだ」
そう、実は私も猫が大好きなのだ。高杉くんとは話が合いそうな気がする。屋上についた暁には2人で猫のよさについて話し合おうじゃないか!
「・・・誘ってんのか?」
今から授業を サボタージュ しようじゃないか!
高杉くんと猫談義!
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