Ring-現代-

□第二話
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ぱたん、と
リビングとキッチンを隔たる扉が閉められた音を確認すればうっすらと目を開けてみる。


こちらの世界でも、朝は同じように来るのか…


オールドラントと変わらない太陽の日差し。
私の居たところが悪かったのか、カーテンの隙間から漏れる朝日の光で数時間前には目が覚めていた。

が、数時間前までは、自分でも信じられないくらいぐっすりと眠りに落ちていたことも事実。

この私が、見ず知らずの人物の部屋で警戒することもなく熟睡してしまうとは…
異空間を越えるということは想像以上に体力がいることなのだろうか。



掛けられた毛布に手を掛け、扉の向こうへと視線を移す。




昨晩、一通り例の鉱石についての資料を作製し終えた頃には彼女は眠りに落ちていて。

実に穏やかな表情で眠る彼女に、オールドラントに残してきてしまった私の大切なものの姿を無意識に重ねてしまった。



そう、似ているのだ。



だから、どこか警戒心が薄れてしまうのだろうか?
安心感が生まれてくるのだろうか?
彼女に出会ってから、言い表わすことの出来ない感情が私の心に渦巻いてばかりだ。





部屋に微かに香るこの紅茶の香りも、そう
オールドラントにいる頃も、私はこの香りの紅茶を好んでよく口にしていた。

そのことも知っていて、彼女は昨夜この茶を出してくれたというわけでもなかった。


単なる、偶然なのか
彼女には、何かあるのか







考え始めるとキリがない。






茫然と窓の外の光に顔を向けながら、答えの見つからない問いばかりが頭に思い浮かぶのを実感していた。




ふいにかちゃりと扉の空く音がする。
視線を移せば寝巻から着替えの終わった彼女が目を丸くしてこちらを見つめているので、
それが何故か、とてつもなく愛らしく私の瞳には映り自然と口元が緩んでしまったことに私はまた驚いた。




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