Ring-現代-

□第三話
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目覚めよ────








「……んぅ…」






───萌……





誰…







「…いい加減起きないと…悪戯しちゃいますよー?」


「……ッッ!!?」








Ring-第三話-









どこからともなく聞こえてきた何か恐ろしい宣言が脳内に響き渡れば、本能が危険を察知したのかばっと飛び起きる。


「おはようございます♪」

「…じ、ジェイド…」


寝起き早々ジェイドのにっこりスマイルは目に毒だ。
ばくばくと脈打つ心臓を落ち着かせるように大きく深呼吸をする。



「目覚ましを止めて尚眠っているようでしたので。
昨夜、今日は朝からアルバイトに行くと仰っていませんでしたか?」

「………あああああッ!」



言われて慌てて時計を確かめてみれば、既に家を出なければ行けない時間帯。
私の顔が一気に青ざめる。



「やっちゃったっ!じ、ジェイド、とりあえず起こしてくれてありがとうっ」



ベッドから飛び起きジェイドの隣を擦り抜ければ猛スピードで着替えを取りキッチンの方で着替えを済ませ、ハイスピードで化粧を済ませる。
仕事となれば話は別なもので、もはや気になる人の前だとか悠長なこと言ってられない自分が女としてどうなんだろう…と思いつつも

背に腹は変えられないッ!




「いやぁ、若いですねぇ。
ところで萌、その様子ですと朝食を取って行く時間はなさそうですね?」

「あああ、はい、ないです…ジェイド、非常に申し訳ないんですけど朝は自分で作っ…」



ばたばたと荷物をまとめている私の視界に差し出された、布に包まれた謎の物体。


「…なぁに?コレ?」

「お弁当です」

「……誰が、作ったの?」

「もちろん、私です」




…いつの間に………


というよりというよりというより!


ジェイドが お弁当とか!

主夫か!




思わぬ大ハプニングにしばらく脳内の思考が停止される。

目をぱちくりとさせながら茫然とする私を見て大きく笑えばジェイドは私の手を取りはい、と弁当箱をしっかりと持たせる。




「ほらほら、急がないと遅刻してアルバイトなんかすぐに首にされちゃいますよ〜?」

「え!?あ!そう、だよね!
い、行ってきますっ!」


玄関へと赴く私をジェイドは律儀に見送りにきてくれているようだった。
背後にいるであろう気配にはっとし、くるっと振り返ってジェイドを真っ直ぐ見つめる。


「ジェイド、昨日言ったことはちゃんと守ってね!
何かあったら私の携帯に連絡すること、家出るときは合鍵を忘れずに!外に出たら余計なことは喋らないこと!えっと、それから…」

「はいはいはい、ちゃーんとわかってますからお気になさらず。私をいくつだと思っているのですか?」






…それもそうだ。






「…い、行ってきますっ」





うわ、やばい、完全に立場逆じゃん、とか
腕に付けた時計の針とカバンの中で暴れている彼の手作り弁当をちらりと見ながら

得も知れぬ至福感と、
同居人の男の人に起こされてお弁当まで作って見送りまでしてもらった自分への情けなさの二つが入り混じって

私の中を駆け巡っていた。





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