Ring-現代-
□Ring-序章-
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疑いもしてなかった
今日も、いつもの帰り道だってこと。
Ring-序章-
「さっむ…」
はぁ、と白い吐息を洩らし無意識に呟く。
バイト終わりのいつもの帰り道
でも、何となく今日はいつもより心が踊って
星も綺麗で風の音だけが静かに闇夜に響く
早いとこ帰って、アビスの続きやりたいな…
もう何回プレイしたかわからない大好きなゲーム
大好きな大佐
現実にあんな人いたら困るんだろうけど、やっぱり憧れる
彼や、彼の仲間、彼らの世界
自然と口から、馴染み深いユリアの大譜歌が紡ぎだされる
小声だけれど、一音一音確かな音にして、歩きながらも丁寧に歌い上げる
歌い終わると同時に、私は妙な気配を感じた。
立ち止まって周りを見渡してみれば、いつもと変わらない風景
異変は、私のすぐそばで起きていた。
胸元に光るペンダントの石が微かな淡い光を放ったかと思うと、
それは一筋の光となり地面に不可思議な紋様を描きだす。
何が起きているのかわからなくて、ただその成り行きを見守っていると、複雑な模様を描きおわったと同時に地面に描かれた魔法陣のような紋様は再びひとつの光に集約し、私の目の前で人の形を作り出し始めた
驚きと恐怖で足が竦む。
その場から逃げることも出来ずに、私はへたりと座り込んでしまった
しゅん、という風のような音と共に人型になった光は辺りに飛び散り、
その光の中から地に伏せた長い髪の一人の人間が姿を現した。
『…ぅ………』
微かな呻きをあげるその人物にごくりと唾を飲む。
何が、起きたの?
現状を把握しようと、混乱する頭を必死で働かす。
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