行為を無事に済ませた山本は気分爽快とはいかず、倦怠感を感じながらトイレの個室を出て、いつもより念入りに手を洗ってトイレを後にした。ご丁寧にトイレの窓も開けて換気をして。

 綱吉と昼飯を食べようと教室に戻るが、そこに綱吉の姿はいない。疑問に思ったが、自分の弁当を鞄から取り出して再び廊下へと出た。

 山本と綱吉は普段から一緒に昼食を取っていることが多く、そのほとんどを屋上で食べている。雨が降っていない限りは、十割と言ってもいいくらいに使っている場所だ。だから今日も屋上に行ってるものだと思い、屋上へと迷うことなく足を進め、少し錆び付いたドアノブを回し扉を開けた。

 外は正に晴天といっても過言ではないくらい天気が良かった。程よい風が頬に当たり、気持ちよく感じる。まずは綱吉を探そうと屋上を大雑把に見渡すが、綱吉は見当たらない。

「ツナー?」
「十代目ならいねぇぞ」
「ごっ、獄寺?」

 振り向くとそこにはフェンスにもたれかかりながらタバコを吸っている獄寺がいた。いつの間にいたんだと思いながらも、ドアを開けた所からは死角になっているので見えないのは当たり前なのだが、急にいた獄寺に山本は驚きを隠せてない。

「十代目なら、笹川と弁当食ってる」
「え、笹川と?何で?」
「何でって…お前ぇが十代目との昼飯断ったからだろ」
「えぇ?断ってねぇし!」
「さっき俺は見てたんだよ。十代目のせっかくのお誘いを断ってどっか行っちまったじゃねぇか」

 先程のやり取りでは言葉少なく山本が行ってしまったために、そう見えても不思議ではない。しかし、山本本人はそういうつもりじゃなかったのにと困惑するが、笹川京子といえば綱吉が片想いしている相手だ。二人の楽しいランチタイムを邪魔する訳にも行かないし、むしろそれだと余計に綱吉を困らせる事になる。そう思った山本はもう教室に戻るのも面倒だと思い、その場に座り弁当を広げ始める。

「おい…ここで食うのかよ」
「おぅ、何か戻るのも面倒だしな」

あっという間に広げ終わった弁当を前に「いただきます」と言い弁当に箸をつけた。

 そんな山本の行動にもう興味をなくしたのか、タバコを吸うのに集中している。そんな獄寺の姿を山本はチラチラと見やる。

 夢の中では女の子といった感じでしおらしく可愛いという言葉が似合うが、現実の獄寺は強気で勝気で格好いいという言葉が似合う。事実女子の間でも獄寺は結構人気がある。

 そんな獄寺があんないかにも女の子な訳ないと思い、さっきみたいに今まで通りにすれば平気だなと思い、食欲旺盛な育ち盛りのせいもありあっという間に食べ終わり、弁当を包み戻そうとした時に、突風が山本の顔を直撃した。

「うわっ!」

 屋上だからある程度の風は予想していたが、意外な強さの風か吹いて、急な事に目をはっきりと開けられない。獄寺は大丈夫かと思い、何とか薄目にして獄寺を見る。

 同じように急な風に驚いて手からはタバコが落ちていた。しかし咄嗟の事で顔しか守らなかったのか、短いスカートが一瞬だけめくれあがって山本は顔を真っ赤にした。

 風は一瞬だったのですぐに収まったが、山本の鼓動は収まらない。自分でも何が起きたのか頭の中の整理がつかないのに、獄寺が向かってきて山本を襟元を再び掴んだ。

「見たか?」



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