募り、崩れ、また募る

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―遥side


お互いに一目惚れして、

付き合い出した私と圭人。


もう付き合って、一ヶ月は余裕で経った。


「ねー、遥の誕生日っていつ?」

「またその質問!3月3日だって!!!」


繋いでいた手を離して、

ワザと怒ったフリ。


「3月3日かぁ〜〜。」


圭人の顔が納得したような顔になる。

もう何回も言ってるのに、
何故圭人は覚えないんだろう。


そう思いながらも、
また手を繋ぎ直す。




そう。暦はもうすぐ私の誕生日…。

「はぁ。」

「何どうかしたの?」

ため息をつけば顔を覗き込むように見てきた圭人。


「ううん、ちょっとね。」

「悩んでたらなんでも言ってよ。」
「そうだね。」


優しい優しい圭人。


だからこそ、言えない。

言えるわけがない。



侑李との関係に、溝が出来たなんて。


あの日、圭人の事を報告して、

相談に乗ってもらおう、なんて
思ってた私。



侑李の目は決して良いものを見る目じゃなかった。


いつもの侑李じゃない。


思わず腕を掴んでて、その手を離された時


私を見る侑李の目は、初めて見るくらい

冷たかった。


「圭人とお幸せに。」

侑李らしい、だけど侑李らしくない

ハッキリとしていて、感情が読み取れない声。


その言葉を、耳に入れた瞬間、

身体が固まって動けなくなった。


不満。不安。矛盾。


侑李の言葉に、何故か納得がいかない。


「圭人に、チョコレート渡せなかったんだけど、

落ち込んでなかった?」


そんな、幸せ調な質問なんて

頭にイチミリも残ってなかった。


圭人とお幸せに。


そう言われて、嬉しいハズなのに。

むしろ、その言葉が侑李から出るのを
待っていたハズなのに


この、納得のいかない感じは?


ハッキリしない自分に

自分で自分にイラつく。






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