novel

□君の隣に・・・
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―――今まで『俺』は『何』が欲しかったんだろう・・・

『ユニウスセブン』が地球に落とされたとき、その首謀者は「父の描く世界が理想」だと言った。
そして、落とされていく『ユニウスセブン』から、地上の人々を救うことさえ出来なかった。
   
『オーブ』に戻った俺には、何の力も無かった。
いや・・・『オーブ』に亡命した時から、『俺』を認めてくれる首長達は、居なかっただろう…。

唯一―――『本当の俺』を認めてくれていた、誰よりも大切な『彼女』・・・
   
だが、その『彼女』の力になることさえ出来ずに…。
   
だから『力』が欲しかった。
その為に、名だけでなく、自分の気持ちさえ偽って生きている時間が辛かった
ますます戦火の匂いが漂う現状に、只1人、何もできずにいる自分がはがゆくて、『俺にできること』を探しに、『オーブ』を発った。
見送る『彼女』にただ一つでいい・・・『俺』が『彼女』を『愛している』という気持ちを、小さな『リング』に託して…


そして『議長』の元で得た『力』…新しい『剣』
戦いの根源である『ロゴス』を撃つ為に・・・
  
それさえ倒せば―――
  
そう、それさえ倒せば『永遠の平和』がつかめると思った。
だが・・・それは『上辺の世界』
議長の望む世界は『パンドラの箱』に唯一のこされた『希望』さえ、人々から奪おうとしている。
その為の―――戦う『傀儡』とされていたということを『俺』を気づかせてくれたのは、
『フリーダム』…キラ
そして・・・『アークエンジェル』
硬い理念に守られた『オーブ』を、自分の野望に屈服させるため、『ブルーコスモス』の『ロード・ジブリール』の逃走を利用しようとした。

真実にようやく目覚めた『俺』は、俺の逃走を手伝ってくれた、『ミネルバ』のCIC『メイリン』と共に逃走したが、まだ、議長の『戦う人形』としての己に気づかない、『シン』に落とされた。
   
だが、危うく命を救われ、『この戦いの真実』を知った俺は、『アークエンジェル』とともに、また宇宙(そら)へ友と仲間と、共に上がろうとしている。

議長の『真の目的』を止めるために・・・


*        *        *


「こんなところに居たの? アスラン・・・。」
『アークエンジェル』を見渡せる軍港にいたアスラ
ンに、キラが声をかけてきた。

「・・・ここはこんなに静かなのにな・・・何で俺たちは
ずっとこんな世界にいられないんだろう・・・」
アスランは思わず呟く

――――こんな静かで穏やかな世界に、誰だって居
たいはず。それなのに俺はまた『戦い』に
赴こうとしている。

「それは・・・『夢がある』からじゃない?」
「えっ?」
キラの言葉に、ふと耳を疑う。
『夢』と『戦争』―――どうすれば結びつくのだろう・・・?

「『願い』とか・・・『希望』とか・・・悪く言っちゃえば『欲望』?」
「・・・ぇ・・・」
「・・・『ああしたい』とか『こうなりたい』とか・・・みんな思うから、此処にはいられない・・・アスランだってそうじゃない・・・? 僕もそうだけど・・・カガリやラクスも、同じだと思うよ・・・」

キラの言葉に、アスランもふと思う。

そう―――人は『鳥かご』の中では生きていけないのだから。

「・・・でも議長のいう『世界』には、『それ』がない・・・」
呟くアスランに、キラが言葉を返す。
「ずっと此処にはいられるよ・・・でも、『ずっと此処にいろ』ってことでしょう・・・?」
「そうだな・・・」
「そうしたら、確かにそれならなにも起きないから、 こんな戦争は起きないだろうけど・・・でも僕は―――」
「俺も嫌だ。」
アスランも答える。

ただ定められた『運命』を生きるだけの世界―――それは確かに安心できる世界かもしれない。
でも・・・その外に『出たい』と思ったその時―――議長のいう世界はそれが許されるのか・・・?
あの時のように――メイリンまでも巻き込みながら、躊躇することもなく、撃たれ排除されるだけ・・・


それは『個人』であっても…『国』であっても・・・


「・・・これって我儘?」
キラが淋しげに呟く。
「・・・かもしれない。・・・でも・・・だから人は『生きてきた』んだろう・・・? 長い時の中を・・・ずっと・・・」
「・・・うん・・・」
アスランの言葉に、キラが頷く。

「・・・難しいな・・・戦ってはいけないのか・・・戦わなきゃいけないのか・・・」
「・・・うん・・・みんなの『夢』が、同じだったらいいのにね。」
「・・・いや、みんな『同じ』なんだったんだ。」
「・・・え・・・」
キラが小さく聞き返す。

アスランはキラから視線をはずし、空を見上げる。

あの紅の瞳に常に怒りを込めて戦いつづけていた、あの少年―――
彼も『傀儡』である己に気づかないまま、ただひたすら『戦争を終わらせる』為に今も戦いつづけているであろう、あの少年。

アスランはゆっくりと呟いた。

「ただ 『それ』を知らないんだ・・・俺たちは・・・」


―――『夢』を・・・『平和』を願う心―――

その手に銃をとったその時から、俺達は、兵器によって『敵を撃つ』ことで、平和が手に入ると思っていた。
でも、それは間違っていた。
互いをつぶしあうだけでは、憎しみだけを残し、
何も得られないだけだというのに・・・。

アスランはキラの肩を<ポン>と叩くと、そっと歩き始めた。

「アスラン…どこに行くの?」
背中越しに尋ねられるキラの声。

「ちょっと・・・な・・・」 
アスランはそれだけ答えると、そっと港を後にした。


・・・to be continued.
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