novel

□『Dear.Kira』
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Dear.Kira


久しぶりだな、キラ。
お前がプラントへ、ラクスを助けるためにいく、と旅立ってからもうかなりの時間が経つが、ちゃんとラクスを支えられているのか?
お前は月にいるときから、マイペース、といえば聞こえはいいが、面倒くさいことや難解なことは後回しして、最後に結局俺を頼って泣きついてくることばかりだったから、『ZAFT』に入っていきなり『士官』になったと聞いた時は、本当に大丈夫なのか、心配し通しだったんだぞ。

でも・・・それはきっと俺の驕りだな。
お前が地球連合の『ストライク』に搭乗してコーディネーターと戦っている、と知ったときは、俺はきっとお前はまた泣きながら俺が救いに来るのを待っていたんじゃないか、と思っていたんだ。
だからまさか俺の手を振り切って、地球連合軍に戻るなんて事は思ってもいなかったんだ。
涙を拭いながら俺のそでを引っ張っていたお前が、俺が「こうしよう」といえば必ず「うん!」といって付いて来たお前が、どうして―――

そう、俺はお前が成長していたことなんて、全然見抜けなかったんだ。

それだけじゃない、寧ろ俺のほうが成長していなかったんだ。
父のしいたレールの上を真っ直ぐ走り、ラクスという婚約者がいることを当たり前の様に受け入れて。
そうして「大人に認められるいい子」でいれば、自動的に「立派な大人になる」と思い込んでいたんだ。
そう・・・今だから言えるが、お前が自分の意思で歩き始めた時、俺はお前に追い抜かれていたことを認めたくなかったんだ。
いつまでも「囲いの中のいい子」でいることは間違っていないと信じていた俺を、お前が揺さぶったんだ。
最初は流石に俺も戸惑ったよ。今まで自分の信じてきたものが、音を立てて崩れだしたんだからな。
でも、お前やラクス、カガリ・・・皆が自分の進むべき道を自身で作り歩みだしているのをみて、ようやく俺も目が覚めたんだ。

お前に教えていたと思っていたのに、まさかお前に教えられていた、なんてな。

確かにその後、俺はデュランダル議長の考え方を推進し、お前はそれに疑問を投じた時は、また互いの立場を違えたけれど、それでもお前は自分の信じた道を揺るがず、俺はまた立ち止まったままになってしまったがな。
でもそれも間違いではないことを教えてくれたのもおまえだったっけ。

でももう俺は迷わない。
立ち止まらない。
お前がラクスの元へ向かったように、俺は俺の大事な人を守る。
『カガリ』・・・お前の大事な姉は俺が命に代えても守るから。
確かに『オーブ代表首長』といえば、『地の女神』といわれるほど、地球の運命の一端を握っている以上、彼女の身を守るのはオーブ軍准将の立場である俺の一番の役割だ。

でも、それだけじゃない。
カガリが泣いている時・・・笑っている時・・・傍にいたいんだ。
傍にいて、心ごと護ってやりたいんだ。
そう思えるほど「一生の中で一番大事」だと思えるものを、俺は見つけたんだ。
それに気がついたとき、俺の中にはプラントを離れる郷愁も何もなかった。

彼女の傍が、俺の故郷なんだ。

だから約束するよ。

あ、でもそういえば、カガリが「「お前が一緒だと、心配だ」ってキラが言っていたぞ。」といっていたが、お前は何カガリに言ったんだ?
カガリは無邪気にキョトンとしていたが、アレを他の人、特にマーナさんにでも言われた日には、俺は「狼扱い」されるに違いないぞ。

全くお前は、子供の頃から国語の成績もよくなかったから、俺が散々添削してやったけど、それ思い出して手紙の書き方もしっかりしろよ。

それじゃぁ、ラクスのこと、任せたぞ。
それからディアッカは一緒に戦った仲だから、お前もよく知っていると思うが、多分イザークが色々文句言ってくるだろうから、そこは上手く聞き流す方法教えておくな。
あまり真剣に話聞いていると、きりがないからな。あいつは。

また何かあったら話してくれよ。待っているからな。



『アスラン=ザラ』


・・・Fin.
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