novel

□妄想バースディ
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妄想ばあすでぃ。

明日は5月18日、双子である親友と最愛の人のバースディだ。親友には、彼の恋人とお揃いのハロを贈っておいた、きっと喜んでくれるだろう。
そして、本命なのが俺の宇宙一可愛い恋人であるカガリ・ユラ・アスハ(ああ、君の名を呼ぶだけで体の中を甘い戦慄が駆け抜ける。)へのプレゼントだ。

まずはケーキ。カガリは辛いものも大好きだが、それと同じくらい甘いものも好きだ。最高品質のジャージィ・コーディネイト牛から絞った生クリームに、
有機栽培の小麦、地鶏の卵、新鮮なフルーツ、その他選びぬいた材料を使って、俺が全身全霊を込めて焼き上げた最高のケーキだ。
しかも、わざと俺とカガリが食べきれない、しかし他に人を呼ぶには小さすぎる大きさに設定してある。

もちろん、それはカガリと二人だけでケーキとプレゼントのお祝いをし、カガリが「ありがとう、アスラン・・・、私の為に。」と盛り上がった後に、
「じゃ、カガリも俺にお返ししてくれる? 俺はカガリのケーキが食べたいな。」「ん、今食べただろう?」
「そうじゃなくて、こんなに甘いカガリにさらにクリームをのせたらどうなるかな。」「ば、馬鹿っ、ひゃん、くすぐったい。」
・・・とか、普段よりスペシャルな夜を楽しむ準備だ。

(アスラン、流れ落ちた鼻血を拭きに行き、戻ってくる。)

さて、プレゼントだって、もうちゃんと出来ている。以前カガリにあげたマウスロボット、あれは失敗だった。元気の良いカガリが踏み潰すことを
想定しなかったなんて、もう、俺の馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿。(脳内で「コーディネーターも馬鹿は馬鹿だなぁvv」と笑うカガリを連想、そのまま1分経過)

えーと、なんだっけ? そうだ、・・・そこでだ。どんなにカガリが踏んでも壊れないように、象が踏んでも壊れない強度に設定した最新の人口有機神経を
使ったロボットだ。これなら俺たちの愛も”フォーエバー・エンドレス・ラーヴ!!!”
「アスランごめん・・・、壊してしまったんだ。」といってカガリを泣かせるような真似はもうしない。

今年の俺は一味違うっ!!


誕生日当日、夕方からアスハ邸で、オーブに駆けつけたキラとカガリの共同バースディ・パーティが行われた。昼間のほとんど公式行事なカガリの誕生日祝いと
違って、仲間内だけのささやかだが楽しい宴だった。しかし、この間用があって通信をかけたキラと同じ白服のイザークがまともに話が出来ないほど忙しそうだったのに、
キラに通信をかけたときには「ちょっと待ってて、今ゲームセーブして終わらせるから。」と言って、それから逆に俺の予定が押してしまうくらいまで話し込んだのは、
どうなのか、と思う。今日も「あー、ラクスはちょっと遅れるかもしれないけど、僕は大丈夫。」と言って開始時間よりもずいぶん前に来た。

もしかして、役職だけで実際は仕事干されてるのかっ、キラ?! 故郷として少しプラントの将来を憂えないでもないな・・・。まあ、その辺のところは
ラクスに任せておこう、あまり触れてはいけない問題な気がする。

パーティーの終盤にラクスが来ると俺はとっておきの手札を出した。
「キラ、これは俺から君とラクスへのプレゼント。たまには二人でゆっくりしてくれよ。」
手渡した封筒の中には本日の日付のオーブの高級ホテルのスイート宿泊券。俺が意外に薄給だった准将の給料(でもこれはきっと質素を旨とするカガリの意向だろう、
君はなんて慎ましやかなんだ。きっといい奥さんになるよ。誰のかは、もう決まっているけど。)を貯めて買ったものだ。ラクスだって一応女の子だ、超多忙な
毎日、きっと恋人とゆっくりと愛を語り合う時間だって欲しいだろう。これで、この後の時間は俺がカガリを独占できる。

まさに、今、俺のターンが始まった!!!

「まあ、アスラン。私たちの事までお気遣い頂いて・・・、本当にありがとうございます。!」
ラクスがゆっくりと微笑んだ。
「いいの? 高かったんじゃない?! ありがとう、アスラン。」
キラも喜んでくれたみたいだ。何故か、ハロを渡したときより数倍いい顔をしている。・・・でも、こんなに感謝されると、とてもいいことをした気になるな。

「・・・では、カガリさん、参りましょうか?」
「へ?!」
思わず間抜けな声が出てしまった。
「だって、せっかくアスランがお部屋を用意してくださいましたもの、そこでゆっくりとカガリさんと寛ぎますわ。」
「そうだね、今日は実はラクスが余興を用意してくれてるんだよ、楽しみだなあ。」
「いいのか? 私が邪魔をして。二人きりで過ごしたいんじゃないのか?」
カガリが心配そうに二人に聞いた。そうだよ、ナイス・カガリ!!! やっぱり、この後は別々に過ごしたいよな・・・。
「キラとわたくしはいつも一心同体ですもの! それよりも普段なかなかゆっくり話せないカガリさんとキラの絆を深める方が大切ですわ。」
「そうか。・・・ありがとう、ラクス。アスランもいいプレゼントをしたな!! じゃあ、私も今夜は楽しむぞー。」

思わず口をパクパクさせている俺に、キラが「君がくれた券だから君もまあ、ついてきてもいいよアスラン。」と言い放った。
総て読まれていたのかっ?! 「ここからずっと僕のターンだよ!」と言わんばかりのキラと密かにほくそ笑むラクスに俺は少々の殺意を憶えた。

「カガリ・・・、でも、家には俺の焼いたケーキがあるし、な・・・。」
弱い反撃を繰り出した俺のHPをラクスが思いっきり打ちのめした。
「まあ、それじゃあ、それもホテルに運んでもらえばよろしいですわ。・・・もしもし、わたくしですけど、シン・アスカさんに言ってアスハ邸から
ケーキをホテルまで届けてくださいとお伝え下さいません? ええ、今すぐに、ですわ。」
ザフト兵を私用に使わないでくれ、ラクス! シンはきっとラクスの警護の為に来てるんだろう。うっかりキラと握手したばかりにこいつも運命を狂わせられたな・・・。


「静かなーこの夜にぃ、あなたをーまあてるのぉー、いえい♪」
「互いのはねーのいたみぃ、感じてるぅー。」
「・・・・・・。あのう、ラクス。この二人、俺、個人的にとってもよく知ってる人たちなんですが、この人たちってもう死んでますよね・・・。」
「あら、女性の方はともかく、男性の方もお知り合いでしたの? それはよかったですわね。いつも私の歌ばかりではカガリさんも飽きてしまわれますから、
今日は朝から降霊して、歌のうまい方に来ていただきましたの。生きている方と違って疲れを知りませんから、お開きになったらカガリさんを連れて帰ろうなんて
甘いお考えはお捨てになることですわ。」
・・・あなたはスタンド使いですか?! 事情を知らないカガリは自分の為にラクスそっくりさんと元歌手のザフト兵が来てくれたと思い込んで楽しんでいる。


「アスラン、カガリさんは、あなたの大切な方であると同時に、キラの大事なお姉さまで、そしてわたくしにとっても大切な義姉なのですわ。これからも、
それはしっかりと憶えておいて下さいね。」
ささやくような、だがはっきりとした意志を持つラクスの声。

・・・それは、この先ずっとカガリとの二人きりのバースディが妄想で終わることを示唆していた。
「しかし・・・俺は、そんなに諦めが良くない・・・。」
だが、ラクスに隠れたそんなアスランのつぶやきも、盛り上がるキラとカガリの声にかき消されたのであった。
”おまけ。 さて、双子の誕生日から、数日後。 夜、カガリの私室で主に迫る影一つ。「カガリ、この間は二人だけになれなかったし、今夜は離さないから・・・。」「ちょ、待てよ、アスラン。まだ持ち帰りの仕事が、あっ。」アスランの猛攻に耐え切れず一歩下がったカガリの足が何かを踏んだ。 ぶにょ。 「うわああああ、気色悪っ!!! おい、アスラン。お前のくれたこのスライム、悪いけど気持ち悪すぎだ! 返す!!!」「いや、これはペットロボット・・・。」「スライム以外の何者でもないだろ?! とにかく今夜はお前帰れ!!!」 ばたん。 ・・・しまった。せっかく柔らかーい人口有機神経を使ったロボットだけど、なぜだか妙にカガリには不評だった。これなら踏んでも痛くないし壊れないからいいと思ったんだけどな・・・。 「アスラン、クウキヨメ! クウキヨメ!!」あの日キラが忘れて帰ってしまったプレゼントのハロが飛び回って、アスランの頭蓋に激突してから、アスハ家の長い廊下の彼方に消えた・・・。 Fin   ”
 

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