novel
□『Dear.Cagalli』
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Dear.Cagalli
『手紙』…か…
こんなに近くにいるのに、なかなか互いのスケジュールが合わなくて、君と2人きりで話すことのできる時間が少ない以上、こうして通信でなく、形に残るようにするのもまたいいのかもしれないな。
カガリ…
いつも直ぐ隣で立っているのに、こうして演台に立つ君を見ると、ずっと大きく感じるよ。
その度に俺は思ってしまう。
(俺は、君を助けられているのか?)
君にはいつも救われたばかりだったからな。
初めて君とあの無人島で出会った時、幾ら女性であっても、『ZAFT』の俺なら、お前を亡き者にしていたんだ。
でも、君と話をして、自分の心の中に『憎むべき相手』じゃなくても『殺さねばならない相手がいる』ということが、酷く矛盾していることに気付かされて、俺の心に小さな楔が食い込んだんだ。
そして、キラとの死闘の後、君はこう言った。
―――「殺されたから殺して、殺したから殺されて…それで最後は本当に平和かよ!!」
君との出会い…そして君の叫び…
それを聞かなかったら…出会わなかったら…俺はただ『戦うだけの人形』になってしまい、『人としての心』は無くしていただろう…。
そして父上と心が離れ、プラントから脱出して来た俺。父との事を悩む俺に、必死に語りかけてくれた。
―――「いつかお父さんとも話せる日が来るかもしれないじゃないか!」
自分の事しか見えていなかった俺…
カガリが救ってくれなければ、俺はただ自分の事しか見れない、小さな人間のままだっただろう…。
視野を広めてくれた、大切な君―――
あぁ…また君に救われたな…俺は。
『ヤキン・ドゥーエ戦』が終わって、つかの間の平和に奔走する君。
その小さな身体を少しでも癒してやりたい…楽にしてやりたい…
それなのに…なんで俺にはそれが出来なかったんだろう…。
だから再び火種が燻り始めた時、君の為に何かが出来るなら―――と、プラントへ向ったんだ。
「自分が君の為にしてやれる力」が欲しくって。
でも、君と俺の歩む道がずれてしまった。
思いは同じはずなのに…。
本当に俺はバカだよな。
君の目指すもの。キラが、ラクスが、そして多くの人達が望むもの―――『オーブの理念』
君は地上で必死に戦っていた。
俺は、ようやく君の目指すものの為に、一緒に戦える事が出来た。
遠回りをして、傷つきながら…
なぁ、カガリ。
こんな俺でも、君の救いになれるだろうか…?
俺の力なんてたかが知れているかもしれない。
でも、君の心も身体も守ってやりたいんだ。
演台から降りた後の君を見ると、いつも思う
小さな身体
華奢な肩
細い腕
それでも懸命に戦う君
俺は誓うよ。自分自身に。
この先にどんな事があっても
カガリはずっと俺が守る、と。
君の笑顔が続くように。
『アスラン=ザラ』
・・・Fin.