novel

□白鼠×私SS〜第2章〜
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第2章 〜仲間〜

「何々!?もうアスランが手を出してきたの!?」
「へ、変なこと言うな!ただ、荷物の整理を手伝ってくれただけだっ!ほ、ほら、ご飯粒が飛んでるぞ。」
慌てつつもそれをごまかすかのようにキラの頬についたご飯粒を取ってやる。
夕食は日が暮れまで間もない頃だった。ここでは当然ながら自室での自炊もできるが、一階のラウンジにあるカフェテリアで食事をとることもできる。
一緒に夕ご飯を食べよう、と誘ってくれたキラに、カガリは二つ返事で受けて一緒に早めの食事をとっていた。そこでキラが引っ越した後の郷里での出来事や、今日初めて出会ったにもかかわらず、いきなり『貴女のSS』と名乗って部屋に上がってきたアスランの事を報告した矢先に、驚いたキラがご飯をほおばったまましゃべりまくしたてたのだった。
「変じゃないよ!あ〜ぁ、やっぱり僕が残って一緒に荷物整理したらよかったな・・・そうしたら今のご飯粒みたいに、カガリは僕だけ見ていてくれたのになぁ〜」
「『僕だけ』って何だよ。お前はいつも大人しくって強く言えない奴だったから、いつもいじめられて、だから私が助けてやっただけだ。」
「そうだよね・・・カガリはいつも弱い子助けていたよね。『僕らみたいなの』だけじゃなくって、小さい動物・・・子猫とか、小鳥とか、小ネズミとか。傷ついて弱っていたところをいつも助けて大事にしていたね。」
「うん・・・」
だがそこまでいって口篭もる。小さく弱く消え入りそうな命をカガリは何度も助けてきた。しかしそれは単なる世話焼きではなく、代わりに彼らに寂しかった自分の心を埋めて欲しかったのだ。それは十分カガリは感じている。
「それにしても、アスランずるいよ。僕がいないとき狙ってカガリのところに行くなんて。しかもカガリの『SS(シークレットサービス)』って聞いてなかったよ。」
「お前、『アスラン』のこと、よく知っているな。というか『SS』って何なんだよ。
「だってこのマンションの『決まり』だもん。「住人には必ず一人『SS』が付くこと」ってね。カガリだって契約するとき規約読んだでしょ?」
カガリの言葉をさえぎってキラが問う。ウズミはカードキーを手渡した時、一緒に契約書類なる部殺意冊子を渡してくれた。だが、あまりの分厚さに、読み始めると数行で瞼が落ちてしまった。毎日少しでも読みすすめようとしたが、日々同じ所で止まってしまうので、結局は読みすすめられていない=読んでいないに等しかった。
「た、確かに、そう書いてあったけど…」
アスハ家の女子たるもの、プライドも手伝ってカガリはさも熟読してきたかのように返事をする。だがそれとこれとはやはり違う。
「でも、いきなり初対面でいきなり笑顔満開で人様の部屋に上がりこもうとするか?ありえないだろう不通・・・」
「そうやってみんな身を寄せ合って生きているのですわ。このマンションは。」
納得しきれず奥歯にものの挟まったような口調のカガリに、突然届く柔らかな声。カガリが強い辛味のあるアラビアータパスタの皿から顔をあげると、視界に入ったのはキラの傍らに立つ、その声を象徴するような柔らかな笑顔の美しい髪の長いカガリと同じ位の年回りの女性。
「ラクス、戻ってきてたなら、一緒にご飯食べようよ。」
キラが振り向き声をかけると、ラクスと呼ばれた女性は微笑み返す。
「ありがとうございます。でもキラ、いつも申し上げている通り、SSはご主人様を守るために在るのですから、主人がお食事を召し上がられて、お部屋に無事お送りするまでは、自分のことは控えておりますのよ。それよりキラ、こちらは?」
「あ、紹介まだだったね。彼女は『カガリ』。僕の大事な幼馴染。で、カガリ、こっちは『ラクス』。僕のSS。」
〈ゲホッ!〉
平静になろうとコーヒーを口に含んだとき、またもキラは事も無げに紹介し、カガリは思わずコーヒーを吹き出した。
「お、お前、女性にSSしてもらっているのか!?」
「だって僕より強いもん。ラクス。」
またあっさりと返答するキラに、カガリが「ぽかーん」と口を開けたまま唖然とする。こいつには男のプライドとかそういうものはないのだろうか。・・・まぁ確かにキラは幼少期から、何かあればすぐ泣いて、女の子だった自分が懸命に助けていたけれど・・・
「まぁ、キラ。それは「今の」私ですか。それとも…」
「あ、もちろん『あっち』のほうだよ。」
ラクスの柔らかな、でもきりっと問いただす声に、キラは慌てて言い直した。

・・・to be Continued.
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