その他

□金の斧 と 銀の斧
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昔々ある所に、貧しい3人のきこりが森に住んでいました。

強欲な長男ランドル
ズル賢い次男ダグラス
そして正直者の三男テレンス

彼らが木を伐りに森へ向かうと
決まって長男は近くのいい樹を手当たり次第に伐り倒し、次男は兄が伐った木をこっそりくすね

三男は遠くまで好ましい樹を探し歩き、重い木を運ばなければなりませんでした。



ある時、テレンスが泉の近くで素晴らしい立ち樹を見つけ
それを伐り倒そうとして、誤って大事な斧を泉に落としてしまいました。

刃こぼれし、いつ折れてもおかしくない鉄の斧でしたが
これがないと仕事ができないとテレンスは慌て困り果てました。

すると泉から美しい3人の女神が現れ、それぞれ金の斧・銀の斧・ボロい鉄の斧を持っていました。

太陽のような金髪の華やかな女神は「貴方が落としたのはこの金の斧ですか?」と訊ねました。

テレンスは「いいえ、そんな立派な斧ではありません」と正直に答えた。

月のような銀髪の澄ました女神は「それではこの銀の斧ですか?」と訊ねました。

テレンスは「いいえ、そんな綺麗な斧ではありません」と正直に答えた。

「私が落としたのはこちらの鉄の斧です」

テレンスはボロをまとった愛らしい女神の持つ、刃こぼれだらけの斧をしめすと、女神たちはすべての斧を男に差し出して言いました。

「正直な貴方にはこの金と銀の斧も差し上げましょう」

ところがテレンスは鉄の斧だけを受け取り、金と銀の斧は拒みました。

「私が落としたのは鉄の斧だけです。金や銀の斧で樹は伐れない。飾るか売るしか出来ない物を、女神様から受け取るわけにはいきません」

女神たちは男の言葉に感心し、2人の女神がボロをまとった女神を前に出させて言った。

「貴方のような誠実な方には妹を妻に与えましょう」
「そして森の奥に新たな家を建てて暮らしなさい」

テレンスは喜んで美しい女神を妻に向かえ、女神たちの言う通り森の奥に家を建て、二人で暮すことにしました。

テレンスが美しい妻を兄たちに紹介し、その経緯を話すと
兄たちは欲に目がくらみ、全く同じことを考えつきました。



数日後、長男ランドルが次男ダグラスの眼を忍んで泉へ向かいました。

ところが目ざといダグラスは兄に気づき、こっそりと後をつけて行った。

そしてランドルは樹を伐るふりして鉄の斧を泉に投げ込むと
泉から美しい2人の女神が現れて言いました。

「貴方が落としたのはこの金の斧ですか?」
「それとも銀の斧ですか?それとも」

最後に取り出した鉄の斧を聞く前に、ランドルは「私が落としたのは金の斧です」と欲深く答えた。

すると女神たちは怒り、金色の女神は言いました。

「ではこれを貴方に差し上げましょう」

ランドルは喜んで貪欲な手を出したが、女神が持つ金の斧は見る間に鎔けてしまい、男の頭に降り注ぎました。

焼けた金を被ったランドルは熱さにもがいて死にました。


それを陰から見ていた次男のダグラスは、また数日後に泉にやって来て、兄と同じように鉄の斧を投げ込みました。

するとまた2人の女神が現れ言いました。

「貴方が落としたのはこの金の斧ですか?」
「それとも銀の斧ですか?それともただの鉄の斧ですか?」

ダグラスは少し考えたが誘惑に負け「私が落としたのは銀の斧です」と嘘で答えた。

怒った銀色の女神は「ではこれを貴方に差し上げましょう」と男の頭の上で銀の斧を熔かしました。

するとダグラスはすかさず懐から器を取り出して、全ての銀を受け止め
家に持ち帰り固まるのを待ちました。

ところが銀はどんなに待っても固まらず
いつしかダグラスは気が狂い、その銀を飲み干して死にました。



兄たちの死を知らないテレンスは、ある日様子が気になって一度家を見に行きました。

ですが兄たちの姿はどこにもありません。

代わりに泉の前に金の斧と銀の斧が二つ並んであるのを見つけ
それを新しい家に持ち帰り、死ぬまで妻と幸せに暮らしましたとさ


おしまい
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