1059musou

□横隔膜の甘いところで待ち合わせ
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悲鳴を何とか飲み込んで、私はビーカーを取り除き、一寸法師(仮)とコミュニケーションを取り始めた。
何事も冷静沈着。それが私のスタンスである。
しかし、傍目からみれば此ほどシュールな光景は無い。
それは一寸法師(仮)も感じているだろう。
感謝と困惑を綯い交ぜにしたような表情である。

「ありがとう、礼を言うよ」

「は、はあ」

「私の名前は毛利元就。君の名前は?」

一寸法師(仮)は毛利元就と名乗った。
日本史の教科書に載っているかのような名前である。
しかし私は日本史に疎い。
というか、教科書を開いた途端に眠くなる。
先生の説明は比喩でも何でもなく子守歌だった。
だから記憶が曖昧で、結局良く分からなかったが、元就氏が礼儀正しいことは分かった。私が名乗り返すと、『良い名前だね』と笑顔で返してくれた。大人である。
ありがとうございます、と返しておいた。

「ところで、」

「は、はい。なんでしょう」

「此処はどこだい?」

本題に入ったのが、分かった。
元就氏が困ったような表情になった。




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