水軍パロディ

□名前をつけましょう
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「三平太とかは?」

「そんな顔じゃねぇだろう…」

「澪(ミオ)とかどうだ?可愛いだろ」

「疾風さん…それ前飼ってた猫の名前でしょ…」

「じゃあ兵庫第五協栄丸はどうだ?縁起を担いで…」

「すみません、お頭は少し黙っててもらえます?」

「決まらないなぁ…」



兵庫水軍は見張り要員を除いて、全員一カ所に集まっていた。

その中心には重とその腕に抱えられた赤ん坊。

子供をここで育てていくことを決めたものの、まだ名前が決まらないのだ。

「どうせなら良い名前を付けてやりたいです。皆で一緒に考えましょう」

と重が言い出し、先程から半刻皆でそれぞれ意見を出し合っているのだが、ろくな意見が出てこない。

それどころか他人の提案した名前をけなし合うばかりで、一時殴り合いになった時もあった。

「この子肌がすごく白いじゃない?だから白とかどうかな」

「いや、髪が漆黒だからむしろ黒だな」

「お前ら真面目に考える気あんのか!?」

冗談か本気か分からない表情で意見を出す網問と義丸の頭にげんこつを落とすのは蜉蝣。

こんな調子で時間は過ぎていき、結局その日赤ん坊に名前が付けられることはなかった。

「あっ!疾風さんその子どこに連れてくんですか」

「どこにって、風呂に入れてやろうと思ったんだよ。
二人で入れば、時間短縮できんだろ?」

「駄目です!その子は俺が入れるんですー!!」

子供を抱えてどこかに行こうとする疾風の前に立ち塞がる重。

「いいだろ、俺に任しとけ。こう見えて湯浴みは得意なんだよ」

どこか自慢げに語ってみせる疾風。

確かに疾風は見かけと違って家庭的なことが得意で可愛いものが好きなのは暗黙の了解となっている。

「嫌です!」

「何でだよ」

「…何か生理的に」


ごすっ!!!


「一言多過ぎだ」

脳天に巨大なたんこぶを作って床に伏せる重。
横を通り過ぎる疾風の片手には、しっかりと赤ん坊が抱えられていた。
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