RENORN!*短編

□言わせたかった
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「むーちゃん、むーちゃんっ」
「美弥、その呼び方やめて下さい。犬にバカにされるんです。」
「いいじゃない、幼なじみでしょ? ねっ」

にこっと満面の笑みで言われれば、何も言えなくなる自分が時々イヤになったりします…。
「よくないですよ…」
ため息まじりに言うと、彼女は片方の頬を膨らませてブツブツと文句を言う。

それがなんだか愛しく見えてしまうのは、どうしてでしょう?

「…いいですよ、もう慣れました。」
僕が微笑むと、美弥は顔を明るくさせて、また満面の笑顔になった。
「それで、なんですか? 用事は。」
僕が問いかけると、美弥は思い出したように話始めました。

「あのねっ、あのねっ!! こっちの服とこっちの服、どっちがいいと思う?」
バッと二つの服を見せる美弥。

あぁ、またですか…

「そんなこと、知りませんよ…第一、僕には関係ありません。」
「もう…冷たいなぁ…むーちゃんにしかこんなこと言えないのに…」

そんなこと…知ってます。
僕にしか話してくれないのは嬉しいですよ?
ですが…

好きな子が好きな人のために服を選ぶのを手伝うなんて…普通しませんよ?

僕は絶対にしません。

「美弥…本当にボンゴレ十代目が好きなんですか?」

そう、美弥の好きな人はボンゴレ十代目、沢田綱吉。

並盛中の生徒で、あだ名が「ダメツナ」。
スポーツがダメダメ、勉強もさっぱり。
当然、マフィアになど、向いてはおらず。

でも、仲間を思う気持ちだけは強かったんです。

僕が問うと、美弥は顔を赤らめて、戸惑ったように答えた。

「なっ/// なに…いきなり…っ」
「どこがいいんですか?」
「そ、そりゃあ…優しくて、ちょっとドジなとこ…かな。」

ドジ?
なぜドジで好きなんです?

「ドジなのが…いいんですか?」
「うん、だって、可愛いでしょっ」

満面の笑み。
僕は、その笑みが僕へのものでないと知りながら、ドキッとしてしまった。

「…そうですか。」
僕が少し残念そうに言った瞬間―…

「でも…」
「?」
「むーちゃんみたいな、強い人も好きだなぁ」

…え?

「今…なんと言いました…?」
「ふぇ? だから、むーちゃんみたいに強い人も好きだよって。いざと言うとき、助けてくれるでしょ?」

思わず、自分の耳を疑った。

僕みたいに強い人が…?

その言葉に、すこし顔が緩んでしまった。

「美弥は、優しいですね。」
美弥の頭の上にポン、と手を置いて
言うと、美弥は顔を伏せた。

どうしたんでしょう…。

ヒョコッと顔を覗かせると、美弥の顔が赤かった。

「美弥? 熱でもあるんですか?」
美弥はバッと顔をあげて、
「だ、だいじょーぶっ! さ、早くしないと約束に遅れちゃうっ!」
そういって、さっき僕に見せた服を一着持って行ってとなりの部屋に入って行った。
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